調査データ

アフターピル市販化への薬剤師の不安は何?【薬剤師100人にアンケート】

アフターピル市販化への薬剤師の不安は何?【薬剤師100人にアンケート】

  • 2021.04.21

2021年現在日本でアフターピルは処方せん医薬品であり、医師の診察を受けないと入手できません。
緊急性が高い薬である割に、服用までに時間がかかるのが現状です。

現在は市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」による署名活動等により、アフターピル市販化に向けた動きが進んでいます。

薬剤師による「日本の医療・薬事制度について考える会」からも「緊急避妊薬(アフターピル)の分類を『処方箋医薬品以外の医薬品』に変更し、薬剤師が提供できるようにしてください」という署名活動が行われています。

ただ薬剤師にとって、アフターピルはそれほど身近な薬ではありません。
市販化において、対応や環境の整備に不安を感じる場合も少なくないでしょう。

今回は経口避妊薬の市販化を見据え、一般の方のアフターピルの対する不安に対する感想や、アフターピル販売への薬剤師側の不安・想定される販売環境を調査しまとめました。

実際にアフターピルを調剤・服薬指導したことがある、薬剤師の経験も伺っています。

将来アフターピルを薬局で取り扱う際の、対応のヒントになればと考えています!

三上小夜香

アフターピルの市販化に対して、薬剤師側の課題が見える結果となりました。妊娠が不安な女性をサポートできる体制が望まれます。

※問1、問3は複数回答可。ご紹介する回答は、読みやすいように一部修正しています。

対象者:薬剤師100人
調査方法:クラウドワークスによるインターネット調査
調査期間:2021年3月9日~3月13日
アンケートの回答全文

1.一般女性がアフターピルの市販化に対して不安に思うことについて、どのような内容に驚きを感じましたか?

一般女性に対するアンケートで、アフターピル市販化に対する不安は多いものから以下の通りでした。
一般女性のアフターピル市販化に対する不安

この結果を見て、薬剤師がどのように感じたか伺いました。

薬剤師が一般女性のアフターピルに対する不安に対し驚きを感じた内容を、回答数が多かった順に紹介します。
薬剤師が一般女性のアフターピルに対する不安に対して驚きを感じた内容

1位 プライバシーの確保に不安を感じること 28%

プライバシーの確保。薬剤師には守秘義務があり、不必要な情報を聞き出すこともないので、安心して相談してほしい。

こちらの思っている以上に購入に対して不安があるのだと考えなければならないと思います。
販売にあたり必要最小限のことしか聞くつもりはありませんが、不安や不快感を与えない言葉を選びや態度、表情を意識する必要があると感じました。

医療従事者としてそれぞれの患者様のプライバシーを守ることも当然の義務です。一方で副作用のリスク回避等のために、どうしても販売前に患者様にお伺いしなければならないことはあるので、それがプライバシーの侵害だと思われないような説明や質問の仕方が重要になってくると感じました。

思ったよりも、プライバシーが守られるかどうかを不安視する声が多い事に驚きを感じました。
確かに薬剤師は必要な範囲で、その患者が安全にその薬を服用出来るかどうか正確に把握するため問診を行いますが、薬剤使用の安全性を担保するためで、その業務以外に利用することはなく、不安や抵抗を感じる方が多いという感覚はあまり持っていませんでした。

三上小夜香

日本人は性をタブー視する傾向があり、プライバシーを気にする方がとても多かったです。
一部大声で服薬指導をする薬剤師がいることも、不安をかきたてる要因の1つとなっている可能性があります。

2位 副作用に対しての不安が大きいこと 27%

副作用に関する不安が多いことに驚きました。正直、避妊を失敗したことに対する不安の方が強いと思っていました。

ノルレボの副作用の発現率は高くないことが、自分の想像以上に周知されていないと感じた。
副作用が発現するリスクと、副作用を恐れて服用しなかったとき望まない妊娠をするリスクを、患者自身が冷静に比較し判断できるよう、日頃から情報提供することが必要だと思う。

副作用の心配についてですが、お薬には全く副作用がないと思ってらっしゃる方も一般の方は多いかもしれません。ただ副作用が全くないお薬は基本的にはないので、副作用の説明をしっかりする必要があると感じました。

三上小夜香

副作用に対する不安が、予想以上に大きいと感じた方も多かったですね。避妊薬=強い薬という誤解を持つことで望まない妊娠をしないように、薬剤師側から働きかけできると良いと感じます。

3位 薬剤師が信頼されていないこと 20%

薬剤師に怒られたり呆れられたりするかもしれない、セルフレジで買いたいなどの意見に驚きました。日頃、薬剤師に縁が薄い層が当該薬の購買層に重なるためやむを得ないかも知れませんが、職業的にまだまだ信頼を得ていないのかなと悲しく思いました。

薬剤師は薬の専門家であるにも関わらず、病院受診をせず薬局での直接購入に不安を感じる方が多いこと。

薬剤師が知識不足であったり、プライバシーに配慮が足りなくなる事態が予測されるという回答について。やはり一般の方々には旧時代の対物業務のみ行い人間味が感じられない薬剤師像が根強く残っているのだと感じました。
現在の多くの薬剤師は知識もしっかり蓄え、プライバシーやコミュニケーションに対する術も十分備えた状態で服薬指導を行うことができる。ということを認知していただければアフターピルの購入の不安が一つ解消出来るのではないかと考えます。

4位 病院で出される薬と効果が同じか不安なこと 13%

病院で使用するアフターピルと同程度の効果が得られるのか、という疑問を持つ人がいること。でも処方薬とOTC医薬品に効果差を感じる人がいる、と似たような意味かな?と納得しました。

風邪薬に代表されるように成分は同じであるにも関わらず、病院でもらう薬の方が良く効くという認識の方が、まだまだ多いことにも驚きます。

三上小夜香

病院でアフターピルを処方してもらうときも、基本的には問診のみです。薬剤師による対応と内容も薬も変わりません。薬剤師が薬の専門家であることを、もっと知ってもらいたいと感じる結果でしたね。

5位 一般女性の不安内容は全て想定の範囲内 8%

特に驚きを感じることはなかった。「一般女性が不安に思うこと」に挙げられていることは想定範囲内だった。

欧米諸国のように薬剤師の信頼性が高くない日本では薬局での説明やフォローに不安を感じてもおかしくはないと思うので、特に驚きは感じませんでした。

その他 9%

アフターピルの濫用(妊娠リスク管理意識の低下)が心配という声がありますが、薬局できちんと管理されたアフターピルを使用するので、それは実際には大きな問題ではないと思いますし、そのリスクよりも、やはり妊娠してしまうその女性の人生の方が大切だと思います。

アフターピルを買いに来る人はきっといろんな不安を抱えていると思うので、できるだけ対処したいと思っていた。
だが、これだけいろんな不安を感じるのだと思うと驚く。と同時に簡単には取り扱えないと思う。

三上小夜香

国内での低用量ピル服用率は約0.9%であり、先進国平均の24.6%[1]を大きく下回ります。
男性主体の避妊方法であるコンドームは失敗率が高いことを薬剤師側も理解し、正しい知識を持って販売に当たる必要がありますね。
低用量ピルの服用も、もっと広がることが望ましいと考えられます。

2. 薬局でアフターピル(緊急避妊薬)を取り扱うことへの不安はありますか?不安の理由も教えてください。

アフターピルは、現状処方件数の少ない薬です。
服薬指導の経験がない薬剤師が多い上に、デリケートな薬でもありますね。

アフターピルの市販化が実現した場合、薬局で取り扱うことへの不安がないか伺いました。

結果はこちら。
薬局でアフターピルを取り扱うことへの不安はありますか?

理由は以下です。

アフターピルの取り扱いに不安がある理由

妊娠を希望していないタイミングでの妊娠するかもしれない可能性に対する不安や、焦りをきちんと汲み取ってフォローできるか。

正確な説明ができるかどうか。また本当に必要としている人に、正しく販売ができるかどうか(正しい用途以外での使い方に加担してしまいそうで怖い)

ドラッグストアという環境の中で、プライバシーを守りながら、接客できるのか、患者様にとって最適な環境でメンタル的なケアも含めて、薬について説明できるのか不安です。また、繰り返し購入される方などがいた場合の対応も不安です。避妊が簡単になるという認識が広がらないか心配です。

扱うこと自体は賛成です。薬剤師サイドの研修を充実させてほしいです。そしてそれはいろんなサイトや研修によってマチマチなのではなく国などが統一したガイドラインを、作ってほしいです。

男性薬剤師なのですが、どこまで深く聞き取りをしていいのか、どう説明したら良いのかが分からないので、とても不安です。

100%の避妊効果がないので、妊娠された場合に説明不足だったなど、トラブルが起こる可能性が高いので不安。一般的に説明なんて要らないと拒否する方に限って、後で説明が足りなかった、もっと説明すべきだった等、身勝手な発言をされることが多いので、説明不要と申し出があったなど根拠情報を残しておかないと不安。

三上小夜香

薬局での対応に対する不安や、避妊意識の低下・犯罪行為の増加への不安の両方からの不安意見が見られました。
市販化実現の際には薬剤師向けの研修やガイドラインの作成、加えて婦人科への連携や正しい避妊知識の啓蒙が求められますね。

3. アフターピル(緊急避難薬)が一般販売できるようになったとしたら、どんな環境が必要だと思いますか? または、どんな環境が用意できますか

緊急避妊薬は、他の薬に比べてデリケートな問題に関わる薬です。

市販化が実現したとしても、現状の第一類医薬品と同じ対応で販売することは難しいでしょう。

そこでアフターピルの市販化が実現した場合に、求められる販売環境について伺いました。

回答数が多いものから、ご紹介します。
アフターピルの市販化が実現した場合に求められる販売環境

1位 個室などプライバシーを保てる販売環境 56%

プライバシーの保護は絶対に必要だと思う。相談しやすい環境、買いやすい環境できれば個室で対応できればいいなと思う。

「周りに話が聞かれないようにする配慮と構造が必要だと感じます。
マンツーマンでの対話が不可欠だと思います。

ドラッグストアでは規模や立地などの関係でなかなかプライバシーの守られた環境を作るのが難しい店舗もあると思います。調剤薬局が併設されている店舗であれば、調剤薬局に案内するなどの対応をとると良いと思います。

個室があればベストだが、プライバシーが保護できるようなブースがあればゆっくり説明できると思う。生理痛や婦人科系の相談全般を受け付けられるブースがあると行きやすそう。

患者のプライバシーが確保される環境を整えるべき。質問等は書いたりタブレットを活用するなどして、アフターピルを購入したことが周りに知られないよう配慮する必要がある。

2位 女性薬剤師による対応 23%

性的な内容に関わる薬剤についてはできるだけ同性が対応できるように配慮するのが大前提かと思います。
また、緊急避妊薬を必要とする人が、複数のスタッフを経由することなく、真っ直ぐに薬剤師との対面販売にたどり着けるような導線が作れればなお良いかと思います。

女性薬剤師による対応。男性薬剤師でも対応可能だが、患者が選択できる環境があると良い。

やはり男性だと言いにくいため、女性の多い環境の方だといいのではないかと思う。
なかなか服薬指導時に男性から聞き出すことは難しいです。

三上小夜香

出来るだけ周囲に購入を気付かれないような、購入環境が求められますね。個室での対応が望ましいですが、スペース的に難しい薬局では課題となりそうです。購入者・聞き取る薬剤師の双方にとって、同性同士の方が話がスムーズでしょう。

3位 アフターフォローの体制を整える 22%

副作用が発現やしたときや出血したときなど、婦人科を受診することになると思うので、医療機関との連携がスムーズにいくような環境づくりが必要だと思う。

ドラッグストアでも聞き取った内容などを記録するカルテのようなもの。副作用が出た場合にすぐに繋げる病院との連携。事件性があると判断した場合などの対応ガイドライン。

4位 緊急避妊の正しい知識を身につける 15%

販売店はメーカーからの指導せんと説明会(オンラインとかでみんながなるべく受けられる形で)が必須だと思う。

薬剤師の中でも専門性を設けるため、eラーニングやテストなどの認定制度があるといいと思います。スポーツファーマシストのようなものでもいいかもしれません。

三上小夜香

副作用の発現がなくとも、今後の避妊を見直すために婦人科への受診推奨は必須となるでしょう。メンタルケアも含め、薬剤師側も緊急避妊に対する知識を高める必要がありますね。

5位 オンラインを利用した手続き等 6% / 6位 24時間対応 5%

環境的に、周囲に聞かれると患者さん本人の不安につながると思われます。ネットで支払いのみして受け取りだけを薬店で行うというシステムであれば必要な情報をあらかじめ選んでもらい必要分情報提供できるのではないかと考えます。

インターネットで取り扱い近隣店舗が検索出来たり、また受け取りの予約など出来たらよいかと思います。

アフターピルは夜間に必要になることが多いと思うので、24時間販売できると良いかと思います。

その他 13%

小学校や中学校での正しい性教育の実施が必要だと考える。産婦人科の病院では助産師が定期的に性教育を学校に行っているが、薬剤師も主体的に実施しなければならない時代なのではないかと感じる。

アフターピルを販売している、詳しい薬剤師がいるなどの表示があると安心して来局されると思います。
私はドラッグ併設の調剤で働いていますが、スタッフの人数が多いので名札にアフターピル販売できるなどの表示があれば質問もしやすいのかなと思いました。

身分証の確認も必要ではないでしょうか。同一人物が頻繁に購入することはおかしいですし、男性の購入はできないようにするべきだと思います。一方で経済的負担を女性だけに強いることにもなるので、なんとも言い難いですが。。。住所と氏名を記載する書類と身分証のコピーの保管は義務付けるべきだと思います。

三上小夜香

在庫や女性薬剤師の有無がオンラインで確認できるシステムは、実現して欲しいですね。24時間販売可能な店舗が検索できると、購入者に大きなメリットがあります。
アフターピルの購入が恥ずかしいものという意識が変わるように、薬剤師も働きかけて行きたいと感じます。

4. アフターピル(緊急避難薬)の服薬指導をした経験はありますか?服薬指導経験のある方は、指導した内容や指導の感想を教えてください。

アフターピルの服薬指導をした経験はありますか?
アフターピルの服薬指導経験があるのは、回答者の14%でした。

市販化の際には研修など、薬剤師側の対応力を高める何らかの方法が必要と考えられますね。

アフターピルなどデリケートな薬の服薬指導は、聞き出しにくい中で必要な情報を聴取必要があり、難しい服薬指導の1つです。

アフターピルの服薬指導経験がある方に、指導の内容やその時の感想を伺いました。
回答をいくつかご紹介します。

性行為からどれくらいの時間が経っているのかを確認した。値段の高さの理由(※)や副作用も説明した。相手が外国人だったので確認や服用の注意点を伝えるのが大変だった。

※多くの国ではアフターピルを数百円~2,000円程度で購入できます。

コンドームが破れた患者さんへの指導で、パートナーもご一緒でした。処方に先立ち、婦人科からも内線が入りましたし、患者さんもパートナーも誠実にお話しくださった印象があり、ほぼ通常の初診患者と同様の手順を踏んで服薬指導をしました。

ヤッぺ法でしか指導したことがないのですが、服薬方法、副作用のことについてはしっかり説明しましたが、別性ということもあり薬局ではそこまで深く踏み入れることができていません。患者側もなかなか初めて会った薬剤師にどこまで話をしてよいのか分からないと思いますし、薬剤師側も不安な状態で来た方にどこまで話を聞けば良いのか…なかなか難しいですね。

夏休みや年末年始にこられる学生さんがたまにいました。併用チェックや、服用方法、考えられる副作用について説明しました。(性行為から)何時間くらい経ったかななど重要なことですが、質問はしにくかった経験はあります。

性交渉した時間からできるだけ早く服用することを勧めます。副作用では悪心や頭痛がありますが、万が一服用後2時間以内に吐いてしまった場合はもう1錠服用します。
これは性感染症を予防するものではないので、服用後性交渉する場合はきちんとコンドームなどの避妊法を使用すること。服用後生理予定日より1週間以上、または服用してから3週間以上経っても生理がこない場合は医師に相談してくださいと伝えました。
アフターピルはあくまで緊急避妊薬ですが、人によってはこれを通常の避妊方法と捉える方もいらっしゃるかもしれません。薬剤師の方できちんと緊急避妊と通常避妊について伝えるべきだと思います。

医師と何を話したのか深入りできなかった。薬情に<「〇〇症」のための薬と書いてあったので、指さしながら「こちらの症状に効くお薬です。」と説明しながら服用方法を指導した。 その時は、薬局内には患者さん1人だったけどあまり大声で説明しないよう心掛けた。

病院の窓口でしたので、すぐ服用できるように水をコップに入れて渡しました。注意点を書いた紙を用意していました。が、窓口のため、詳しい説明をその場ですることは省きました。医師との間で決めていたことを実行しました。
平常業務の時間に、アフターピルを調剤することはなかったです。服用する人にとっっては、24時間営業が理想でしょうが、そこにたどり着く思考になれるかどうかが一番の問題点と思います。
どこでどうやって教えるのかという一般的な教養の問題のように思っています。

病院での服薬指導だったので、カルテを見れば患者背景などは分かったため、経緯など突っ込んだ質問はしなかったです。
薬の用法用量、嘔気といった副作用が見られることなど薬についての説明のみ行いました。
初めてアフターピルを調剤し服薬指導したので、調べた内容をそのまま伝えただけであり、今思えば何日目に出血がくるなどの内服後に関する説明はできなかったので、勉強する必要があると感じました。

三上小夜香

私もヤッペ法の服薬指導経験があります。話を真剣に聞いてくださる患者さんだったので、注意点などを声を潜めてお伝えしました。プライベートの確保と、必要なことは確実に確認して伝えることの両立が求められますね。

まとめ

日本で主流の避妊方法であるコンドームの、一般的な使用による避妊失敗率は13%[1]もあります。

正しく避妊しているつもりでも、コンドームが破損したり外れるなどで、緊急避妊が必要となるシーンは珍しくないのです。

緊急避妊法は女性が自分の身体を守るために必要な手段であり、避妊確率を高めるために手軽に入手できることが求められます。

問題が山積みではありますが、望まない妊娠を防ぐためにも、薬剤師がアフターピルのファーストアクセスの場になるのが良いのではないでしょうか。

市販化が実現した際には購入者の不安を払拭できる販売環境を整え、メンタル面も含めてケアできる知識をつけておきたいですね。

出典元
[1]経口避妊薬ファクトブック

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