今後の薬剤師

薬剤師になるということは。薬学生の疑問に大手採用担当者が答えます!

  • 2020.11.11

2019年4月2日に出された「0402通知」や薬機法改正により、薬剤師の働き方に対する意識改革が求められています。
今まで薬剤師に限定されていた仕事が事務員さんにも可能になり、薬剤師はより対人業務の質を高めて行かなければならないですね。

そもそも薬剤師は「AIでなくなる仕事」なんて言われることもあり、不安に感じる薬学生さんも多いと思います。

そこで今後の薬剤師業界の未来について、大手調剤薬局の採用担当者であるブラウンさんに伺ってみました。

Twitterで実際の薬学生さんから出てきた「大手採用担当の方に聞いてみたいこと」にも、仕事のことからプライベートのことまで全部お答えいただいてます。
これから薬剤師になる方たちが、どんな薬剤師になりたいかイメージする参考にしてみてくださいね。

回答くださった方

男性ブラウン(仮名)
大手調剤薬局で10年現場を経験した後に採用担当に。現在は日本の主要都市のどこかで現場と採用の二刀流で出世レースを爆走中。
得意分野は在宅と糖尿病。好きなことは調剤薬局業界の未来を予想すること。
趣味はゲームとギターと野球。好きなお菓子はカプリコ。

今後の薬剤師について

薬剤師の採用状況について

――今年は大手調剤チェーンの新卒採用が好調と聞きます。アインホールディングスは600人、日本調剤も400人採用とか。
このような大量採用にはどのような背景があるのでしょう?

次の2つかなと思います。

  • 現場の人員不足。
  • 出店計画、M&A計画があるため。

個人的には国が薬局の数が減らすと打ち出しているため、M&Aが今後加速していくとみています。

――M&Aが増えていくのでしたら、何も新卒を採用しなくてもいいのではないかと感じます。
買収した店舗の人員をそのまま雇用し続ければいいので。
どうしてでしょう?

薬剤師の確保のみを考えればM&Aで人員も一緒に確保すればよいが、それでも新卒を採用する理由は、新卒は企業理念も浸透させることができ、将来を担う人財として計画をもとに、育てていくことができるため。
対してM&Aで確保した人材は玉石混合であり、企業理念の浸透具合も人によってまちまちであるため。
ひらたく言うと扱いづらいケースも多々あるためかと思います。

調剤薬局業界の人材は、働くうえで組織人としての意識が希薄な方が多いのではないでしょうか。
組織を動かしていくうえで、ビジョンや企業理念、社訓は非常に大切です。

主観ですが、新卒で入社し長く勤められている方は大切にされていると感じます。

調剤薬局はどう変わっていくか

――度重なる診療報酬改定により、調剤薬局をめぐる環境は変化しているなと感じます。
「モノからヒトへ」も叫ばれて久しいです。
そのような中、これからの調剤薬局はどのように変わっていくと感じますか?

0402通知にあるように、現在の薬剤師業務における対物業務が事務員や機械へシフトされていく。薬剤師の対人業務に対してウェイトを置いた報酬体系になることが予想されます。

具体的には、地域包括ケアシステムを表すに最たるものである在宅業務や、薬機法改正にもあるように、地域のハブとなり患者周囲の医療者、非医療者と医師、患者を繋げられる役割が求められるのでしょう。

――最近の中医協の発表や調剤ロボットの進歩を見ていると、対人業務に注力していかなければ、収入以前にそもそも薬剤師として立ちいかなくなる。
そんな印象も受けますが、いかがでしょう?

さらに先の話をするのであれば、中医協の発表から予想するに対人業務に舵をきっていることは自明のため、今後は在宅業務、医師への処方提案、地域フォーミュラリへの参加、高度薬学管理ができる薬剤師が必要とされていく。

これらに代表される対人業務が薬剤師の収入に繋がるようになることが予想される。

要は、大学で学んだ知識をもっと活かせる環境が現場に整わなければ薬剤師の雇用はどんどんなくなるということかと。棚から薬を数えて取り揃えるだけなら薬剤師でなくてよいですもんね。

でも上記のような報酬体系になるのはかなり先だと思います。10年くらいかかるんじゃないでしょうか。(某職能団体の会長さんが、対物業務にしがみついてますからね。)

参考記事 0402通知を受けて、調剤薬局の業務はより深い医療知識が必要になる?

未来の調剤薬局について

――最大手のアインホールディングスでは、オンライン服薬指導の実証実験もはじまっています。
未来の調剤薬局はどのようになっていると思われますか?

アインHD以外にも行っているところは少なからずあるようですね。
未来の予測ということで、私の予想は以下のものです。

最近ではクオールがロッカーでの薬の受け渡しを始めました。
ここから予想できるのは、現在の病院 薬局 自宅という患者の動線に変化が起こるのは間違いないのかなと。

超高齢化に伴い、動線を効率化していかなければ現場が立ち行かなくなることは自明です。
例えば自宅でオンライン上での診察と服薬指導 ドローンでの配送等。

薬学生の増加、国家試験の合格率による現場人員の変化、流通業の規制等様々な要因があるため一概には難しいですが、患者の移動に変化が起こることは間違いありません。

こうなった時に経産省と繋がりの強いドラッグストアが有利な印象です。保険調剤に力を入れているドラッグストアは今後も伸びていくのではないでしょうか。

――AIについてどう思われるかお聞きしたいです。
AIの進化で薬剤師の業務に変化がきそうですか?またはAIに仕事を奪われる恐れはないですか?
若い方にとっては将来AIに仕事を奪われるかどうかっていうのはすごく気になることだと思うのです。

AIの進化の話もありますが、個人的には薬剤師が国家資格である以上仕事がなくなることはないと思います。
AIに関しても規制を作りつつ緩やかに対応していくことになると予想しています。

調剤薬局業界が昨今のイノベーションの波に乗り切れていないのは、国の規制が大きいと考えます。
結局はAIをどう使うかということなので、その管理、監督をするのは人間である薬剤師です。

もちろん有効活用することで仕事の絶対量は減ることになると思います。

そうなれば人員の削減は起こることが予想されます。在庫の管理なんかは飛躍的に楽になるんじゃないでしょうか。

なのでやっぱり対人業務を磨いていかなければいけないのだと思います。

働き方改革について

――世間では働き方改革が話題です。
調剤薬局の現場で働き方改革につながるようなことってありますか?

下記の3点かと思います。

  • 0402通知以降の事務員へのタスクシフト。
  • 有給への考え方の変化(とるためにはどうすればよいかを現場スタッフで考える)
  • 産休、育休取得率の向上

昨年から一定数の有給取得が義務付けられるようになったところがほとんどでないでしょうか。

ブラック企業が話題になったころから、国民全体の労働と休暇への意識に少なからず変化が起こっていると感じています。

現場での苦労について

――実際にはどんな苦労が多いですか?
こんな患者さんが来て困ったなどのお話があれば是非^^

苦労ですか…
淡々と処理するタイプなのであまり感じたことはないですが…
地味に困るのは、話が長い方かつ何を言っているかわからない方でしょうかね。

後日電話で対応や時間をずらしてもらう等、コミュニケーション力が試されるところだと思います。
あとは待合室で中学生の女の子に「可愛いね」って言ってるおじさんとか。
営業妨害なのでお帰りいただきました(笑)

薬剤師のキャリアアップについて

――調剤薬局は転職の多い業界です。日本調剤さんも平均勤続年数は5.8年とか。

転職によるキャリアアップも他業種に比べると盛んだと思います。
しかしそれはデメリットばかりではなく、いろんな経験を積めるというメリットもあると思います。

以前に転職エージェントの方がこんなことを仰っていました。

同じ会社で働き続けている人より、色々な経験や知識・人脈のある方のほうがマネジメントポジションで活躍出来る傾向があります。
同じ会社で長く働く人がダメなわけではないですが、多くの事例やノウハウ・成果の出し方を知っている人は、上のポジションに指名されやすいですし結果も残しやすい傾向です。
薬剤師はどんな年収アップ転職ができるか転職エージェントが徹底解説!より抜粋)


御社を辞められた薬剤師さんも、いろんな経験を積んでいつかは戻ってきてほしい。そんなことってありますか?
実際にそのような方って、みえます?

いらっしゃいますよ!
退職を円満にできていればその後の生活環境の変化により戻ってこられる場合がありますね。

確かにいろんな経験をされている方はひきだしも多く、活躍しやすいでしょうね。
でも共通しているのは、前提としてきちんと目的意識を持って業務に取り組んでいるかどうかではないでしょうか。

何も考えず職歴だけ分厚くなってる方もいますよ。そういう方に限って仕事はできないけど経歴に謎の自信を持っていたり…
そうならないようにしたいものです。

薬学生のみなさんに伝えたいこと

――薬学生のみなさんには、どのような薬剤師になってほしいですか?

医療人として活躍ができかつ社会人としても優れた人になってほしいと思います。
どんな業界に行くにしても、9割以上の人が規模の大小はあれど組織の中で働くことになります。
そんな時に医療人としてやるべきことと、組織の人間としてやるべきことがぶつかる場合があります。

そこでどう落としどころをつけるか?自分の薬剤師としてのエゴだけを押し通すのでなく、組織の人間としてどう動くかの視点も育てていただきたいと思います。

薬剤師の就職活動について

――一般的な就職活動と比較し、ここまで薬剤師の就職活動が楽なのはなぜか考えたことはありますか?

それは、あなた自身を見ているのではなく、あなたの免許を見ているからなのです。

是非就職活動を通じて自分自身を一緒に働きたいと思われる魅力あふれる人にして下さい。
大丈夫です、簡単です!薬局業界では就職活動(業界研究、自己分析、社会人マナー)をきちんとする人はあまりいない印象です。
評価は相対的に決まりますから、ちょっとやれば平均より上の評価がつきます。

どうせやらなくてもよっぽど内定できる(わがまま言わなければ)のだから、少し頑張ってやってみて下さい!
でも人気企業では地域によっては人員が足りてきています。となると優秀な子が希望の勤務地に行ける等がでてくるかも…。

薬学生への一言

――説明会などの公の場ではちょっと言えない。けども薬学生さんにお伝えしたいなってことって、何かありますか?

匿名なので言わせていただきます!!

会社のイベント(店舗見学会やインターンシップ等々)無断キャンセルした方、1000歩譲って許します。

ただ、その後謝罪の電話なし、こちらからの連絡にもでない…イベントは色んな人が関わって準備しています。人としてどうなんでしょうか。
採用の人は意外と覚えていますよ~。

薬学生からの実際の質問にお答えします!

今回は記事作成にあたり、Twitter上で薬学生さんから、「大手採用担当の方にインタビューを行います。お聞きしたいことはありますか?」と応募をかけたところ、下記の質問をいただきました。

実際の薬学生さんの声では「薬剤師としてのお話も気になりますが、その方自身が実際に働いて思っていることを知りたい。」というものも多かったですね。

採用担当の方にお聞きしたいというより、「先輩薬剤師である人生の先輩にお聞きしたい。」そんな印象ですね。

中途採用の方の場合なら、職場環境やお給料について気になることが多いかと思います。

しかし薬学生さんにとっては、そもそも「薬剤師になる」ということについて興味があるのかと感じました。
それでは、ご覧ください!

人生編

――人生の目的はなんですか?

死ぬまで「幸せ」に暮らすこと。「幸せ」の定義は人それぞれですが、私は「不幸でないこと」としています。
いいことがなくても、嫌なことがなければそれでいいじゃないですか。毎朝無事に起きられるのって最高ですよね。

――自分が楽しいと思えることはなんですか?どうやって見つかりましたか?
  1. 自分が学んだことを活かして、誰かに喜んでもらえること。
    就職活動の時に自分の経験を振り返ってみて気づきました。
  2. 人の気持ちを感じられたり理解できた時。
    ですので色んな人と関われる職場がいいと思っていました。

仕事編

――どうして今の仕事をしようと思いましたか?
  • 薬局
    小売店と医療施設の二面性があるところが面白いと思った。企業と病院のいいとこ取りに見えた。
  • 採用
    店舗勤務しているうちに、業界全体を知りたいと思ったから。
    学生時代に就職活動を通じて様々なものを得られた経験を他人にもしてほしいと思ったから。
    学生時代の感覚を失いたくなかったから。
――仕事面では将来どうなりたいと思いますか?

今は第二次分業バッシングの時代です。10年近くたたかれてるんじゃないでしょうか。

そんな業界を少しでも変えたい。業界全体に影響を与えられ、少しでも患者さんのためになるよう業界を変えられるポジションに就きたい。
そのためには能力と知識を高めることと、現在の職場で昇進することが必要。

――その会社で社長になるにはどうしたらいいか

社長になりたいと周囲に伝える、圧倒的な成果をだす、昇進試験に合格する。
弊社ではないですが仕組みがきちんとしていないと、社内の政治であったり、好き嫌いの要素が大きい会社もあるようです。

――入社してみて想像通りだったこと、違ったことはなんですか?
  • 想像通りだったこと
    小売店なのでいくら人間関係が良い・風通しがいいと言っても、店舗に一人クレイジーな方がいると雰囲気最悪。
  • 違ったこと
    細かいところまで経費がでる。残業をしっかり申請しろと言われる。
    完全週休二日制と週休二日制の違いがあったこと。
    『完全週休二日制』は週に全く仕事をしない日が2日必ずある。対して『週休二日制』は、例えば木曜日が午後休み、土曜日が午後休みだと休みが1日あったことになってしまう。
    『完全週休二日制』の会社もありますが、私の会社は『週休二日制』だったため損した気分でした…。
――薬局を選んだ理由を教えてください。

上と同じですが、小売店と医療施設の両方を経験したいと思ったからです。

お金編

――どれくらいお金があったら満足しますか?

多ければ多いほどいいですけど、とりあえず現状(年収500万円~800万円)で満足しています。趣味(映画と音楽とゲームと野球)もできるし、時々贅沢もできる。
足るを知る」の精神です!

――もし今3億円あったら何しますか?

高配当の株に投資。もしくは全額家とか土地とかの資産に変える。どちらにしても仕事は続けます。

人間関係編

――どんな人間関係がいい人間関係だと思いますか?もし普段その為に気をつけていることがあれば教えて欲しいです。

「ごめんな。」「ええんやで。」が言い合える関係。
まず人の印象は初対面でほとんど決まってしまうことを肝に銘じています。

店舗でのコミュニケーションでは、常に話しかけやすい態度でいること・挨拶をきちんとする・相手の話を聴くのではなく「聞く」・ささいなことでも感謝を伝える。

主張だけでなく、根拠と論拠をきちんと伝えることで議論しやすくする。
とにかく相手を承認することをこころがけています。

――勤務先での人間関係に対して、どういう配慮をしていますか?

上の「いい人間関係のために気を付けていること」を、勤務先で徹底しています。
人間関係が悪いと、仕事がはかどりませんので。

価値観編

――なにか大切にしてる価値観ありますか?
  • 中二っぽいですけど、ダサいかダサくないか。
  • 人間には多面性があること。一面だけみてその人をジャッジしないようにしています。
    仕事してると一面だけ見てその人を良い悪いで判断してしまいがちなので。
――なければ健康、お金、時間、人間関係どれが1番大切だと思いますか?

健康。生きていれば何でもできます。(実際にやるかは別として。)可能性があるって素晴らしいですよね。

OFF編

――男性でも育休は取れますか?

取得している会社はちらほらでてきているようですよ。
「プラチナくるみん」は男性の育休取得が一定以上の割合がないと認定されません。
そういった国が認定している制度を取得している企業を調べるのもひとつの手です。

参考記事 厚生労働省 くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて

――結婚しやすい環境は会社が整えてくれますか?それとも自分でやらないといけないですか?

結婚しやすい環境を会社が整えるというのがイメージできないので、結婚後も働きやすい会社を選ぶコツをお伝えします。

産休や育休の取得率を聞いてみるといいのではないでしょうか。

また、全国展開している会社であれば配偶者の転勤に合わせて動くことも可能と思います。
掲げている制度や仕組みを、実際に利用しているのかどうかを担当者に聞いてみることもひとつの手でしょうね。

――薬剤師はモテますか?

少なくとも僕はモテました(笑)
でも、モテるかどうかって自分が所属するコミュニティの中で決まることですから…。

安定のイメージがあるし、男性ならモテるんじゃないですかね?
女性薬剤師は結婚適齢期の時期の年収が世間一般と比べて高くなるため、男性からはハードルが高くなってしまう気がします。
逆に言えば高収入の男性がゲットできるチャンスかも。結婚ってお金だけじゃないですけどね。

――医療関係者との合コンはありますか?

薬局よりも病院の方が多いんじゃないかな。看護師さんとかと頻繁に合コンしてる同級生の話はききます。
あとは出入りのMRさんと仲良くなるとあるかもですね~。

――普段の生活スタイルを教えてください。

7時半に起床。定時が9時~18時。19時~19時半ごろ帰宅。21時までに夕食。
24時には必ず就寝するようにしています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

薬剤師を取り巻く環境はここ数年どんどん変わって行っていますが、根本的な仕事は変わらないし薬剤師という仕事がなくなることもなさそうです。

ただしこれからは「薬剤師にしかできない仕事」のウエイトが大きくなるので、薬学的知識を持った上で対人能力を磨いていく必要があります。

具体的には薬学生の皆さんであれば大学の心理学やコミュニケーション学・実務実習などにしっかりと取り組み、実務実習においては患者さん対応の上手な先輩から技術を盗んできましょう。

皆さんが薬剤師として素敵な一歩を踏み出せることを祈り、私たち先輩薬剤師は医療現場をより良いものにすべく頑張って行きます!

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三上小夜香

三上小夜香

大手調剤薬局に勤務後、転勤族であるMRとの結婚により退職。結婚後はしばらくパートで働き、派遣薬剤師に転向。妊活に専念するため退職し、現在は子育てとライターの兼業中。趣味はゲームとネットサーフィン。
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