ドラッグストアの調剤ブースと調剤薬局における調剤業務では、業務内容はどのように違うのでしょうか。
今回は、「調剤業務」に焦点を当てた場合の調剤薬局とドラッグストアの違いを説明したいと思いいます。
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調剤薬局とドラッグストアの調剤業務の違い
調剤薬局の調剤業務
調剤薬局では、基本的には門前薬局として単科の処方箋を受けることが多いので、処方箋枚数は病院の規模と競合薬局の数によりますが、40枚~100枚程度のところが多いようです。
医師の好みの傾向にある薬や、組み合わせが分かるため、予め薬の在庫は用意しやすいでしょう。
調剤で苦労することはそこまで多くはありません。
ドラッグストアの調剤業務
ドラッグストアの調剤ブースでは、基本的には面調剤が中心となります。
店舗にもよりますが、枚数としては1日当たり10~20枚前後のところが多いようです。
処方箋の内容
面調剤であるため様々な病院からの処方箋を受けることとなり、多岐にわたります。
とはいえ、長期的に見れば同じ患者様が処方箋を持ってくることが多いので、毎回がらりと異なる処方箋というわけではありません。
基本的には近くに住んでいる方が処方箋を持ち込むことが多いので、極端に遠い病院の処方箋を受けることはありません。
疑義照会の頻度の違い
ドラッグストアの調剤ブースでは、疑義照会は比較的多くなる傾向があります。
これは、門前薬局に比べて医師の意向を汲み取りにくいことが要因となってきます。
医師に意図があって用法を変えている場合などであっても、処方箋に添付文書と異なる点があれば毎回疑義照会をしなくてはなりません。
(門前薬局であっても、原則は疑義照会をしなくてはならないのですが…)
どちらかと言えば、業務効率はドラックストアの方が悪い傾向にあるでしょう。
調剤薬局とドラッグストアではどのような患者さんが多いか
普段あまり病院に行かない方や風邪やインフルエンザなどの急性疾患の方は、基本的にはドラッグストアへは行かず、病院の近くの薬局で済ませることが多いでしょう。
一方で、ドラッグストアの調剤ブースを利用する方は、次のような患者さんが多いようです。
ドラッグストアの調剤ブースを利用する方の例
いわゆるDo処方で“血圧の薬”や“高脂血症の薬”を毎月もらっている方では、少なからず残薬はあるので、受診日に慌ててお薬をもらう必要はありません。
すぐにお薬を処方してもらう必要もないので、処方箋の有効期限内にドラッグストアに行くことがあったなら、ついでにお薬をもらうといったパターンが多いようです。
初回はお薬が揃わないことも少なくはありませんが、次回以降も同じ処方の可能性が高いので、用意しておいてもらうことができます。
良く行くドラッグストアで買い物しながら調剤を待つことができるので、患者様にもメリットは大きいと言えます。
調剤薬局での患者様への対応
調剤薬局を訪れる患者様は医師の診察を受けているので、薬剤師に対して何か相談をするということはそんなに多くないでしょう。
むしろ、「さっき医師に話したので、薬剤師に話す必要はない」と考えている患者様がいらっしゃることは、ご承知だと思います。
ドラッグストアでの患者様への対応
一方で、ドラッグストアを訪れる患者様は、基本的にはセルフメディケーションを求めている方が多いので、様々なことを薬剤師に質問をしてきます。
やりがいは大きい一方で、広く深い知識が求められるので、はじめのうちは苦労をすることでしょう。
逆にこのセルフメディケーションを求められることに魅力を感じ、調剤薬局からドラッグストアに転職された薬剤師の方もみえます。
何にやりがいを感じるかは人それぞれですね。
参考記事 やりがいを求めてドラッグストアに転職した体験談
調剤以外の業務内容
調剤薬局は「調剤業務」がメインとなるため、処方箋調剤における業務が中心となります。
薬剤師が複数在籍して、協力して業務に当たることが一般的といえるでしょう。
ドラッグストアでの調剤以外の業務
一方で、ドラッグストアの調剤ブースでは、処方箋が少ない分、業務の形態が変わってきます。
具体的には、以下のような対応を迫られます。
ドラッグストアでの薬剤師の業務
処方箋が少ない店舗では一人薬剤師として勤務する場合が多く、在庫管理や申請書類の作成などを、1人でこなす必要があります。
ドラッグストアによっては要指導医薬品や第一類医薬品の販売ブースを兼ねるため、OTC医薬品の販売を行う必要も出てきます。
その他にも、患者様から医薬品について相談を受けることも調剤薬局に比べると格段に多いので、これらの対応も必要となってきます。
調剤で働くなら、ドラッグストアの調剤ブースと調剤薬局はどちらが良いか
調剤業務をしっかりと学びたいのであれば、より多くの処方箋を取り扱うことが出来、複数の薬剤師と意見交換をすることのできる調剤薬局の方が良いでしょう。
一方で、調剤にとどまらず、幅広い業務やOTCにも挑戦したいのであれば、ドラッグストアの調剤ブースの方が良いでしょう。
患者目線で利用するなら、ドラッグストアと調剤薬局のどちらが良いか
ドラッグストアの調剤ブースと調剤薬局のどちらにおいても、もらうことのできるお薬は同じものとなります。
しかしながら、お薬をもらうまでのプロセスは少し異なるものとなってきます。
患者様の目線で考えた場合、双方にメリット・デメリットがあります。
患者様の目線での調剤薬局のメリット
門前薬局で調剤を受ける場合には、ほとんどの場合お薬をその場で調剤してもらうことができるでしょう。
医師に聞き忘れたことがある場合にも、比較的スムーズに疑義照会をしてもらえます。
患者様の目線での調剤薬局のデメリット
患者様が分散しないため、診療の終了するお昼過ぎや夕方過ぎには、かなりの待ち時間が必要となる場合があります。
OTC医薬品を購入したい場合には、ドラックストアにも寄る必要があるので、二度手間となってしまいます。
患者様の目線でのドラッグストアのメリット
ドラッグストアであれば、待ち時間に買い物をすることができるので、時間を有効的に使うことが出来ます。
また、OTC医薬品を購入することもできるので、処方箋の医薬品以外に栄養ドリンクやマスクを購入する子も可能です。
患者様の目線でのドラッグストアのデメリット
ドラッグストアの調剤ブースでは、処方されたお薬によっては、在庫がないということも考えられます。
風邪薬のように今すぐ服用したいお薬が処方された場合には、結局その他の薬局を探すこととなり、こちらも二度手間となってしまいます。
まとめ
調剤業務を中心に考えた場合の調剤薬局とドラッグストアの違いをまとめると次の通りとなります。
調剤薬局の特徴
- 医師の好みの傾向にある薬や、組み合わせが分かるため、予め薬の在庫は用意しやすい
- 処方箋枚数は40~100枚程度が多い
- 患者からの問い合わせは少ない
ドラッグストアの特徴
- 処方箋枚数は少ないものの、面調剤であるため様々な病院からの処方箋を受け、処方内容が多岐にわたる
- セルフメディケーションを求められ、OTC医薬品などの幅広い知識が必要となる
- 処方箋が少ない店舗では一人薬剤師として勤務する場合が多い
- 調剤薬局に比べて疑義照会は比較的多くなる
一番の大きな違いは、患者様からセルフメディケーションを求められるかどうかと言えるでしょう。
調剤業務に専念したいという方は調剤薬局が、セルフメディケーションを求める患者様の役に立ちたいと思う方はドラッグストアがオススメではないでしょうか。