薬剤師が勤務先を考える際には、新卒であれば病院やメーカー、公務員を視野に入れることも可能です。
しかしながら、これらの職種は未経験の方が中途で転職するには、狭き門とされています。
企業などを一身上の都合により退職した方の多くは、ドラッグストアか調剤薬局で勤務する薬剤師が多いと言われています。
これら2つの業種について、せっかく働くのであれば、将来性のある業種で働く方が良いのではないでしょうか。
今回は、これらドラックストアと調剤薬局の将来性について、ご説明させて頂きます。
好きなところから読む(クリック可)
調剤薬局の将来性
調剤薬局は売り上げのほとんどが保険調剤による調剤報酬であるので、保険調剤を行うことが業務の主となっています。
しかしながら、保険調剤の原資となる国民医療費は、国民の高齢化や医療費の高騰を背景に増大を続けており、医療費抑制の政策が次々と打ち出されています。
2018年度の調剤報酬と介護報酬の同時改定に向け、次の2項目が検討されていることが、つい最近新聞にも取り沙汰されるようになりました。
2018年度診療報酬・介護報酬の同時改定に向けた改革案
- 後発薬医薬品調剤体制加算の要件を、『65%・75%』から『75・85%』へと引き上げる
- 門前薬局の調剤報酬を下げ、かかりつけ薬局への報酬を手厚くする
(出典:日経新聞 門前薬局の報酬下げ、かかりつけ機能を重視 調剤報酬を抜本改革へ)
今後どのような影響を受けるでしょう。
それぞれの場合で考えてみたいと思います。
後発薬医薬品調剤体制加算の引き上げで予想される調剤薬局の今後
現状では9割の保険薬局が、後発医薬品使用体制加算1または2のいずれかを算定していると言われています。
実際には、ギリギリのラインでなんとか65%に乗せている薬局も多く、要件が引き上げになった場合には算定が不可能になる薬局も多く出てくると考えられます。
処方元医院の医師の意向や応需科目の特性上、75%には薬剤師の努力だけでは到達できない場合も少なくはありません。
もしも記事の内容通りに後発薬医薬品調剤体制加算の引き上げが行われた場合には、経営困難となる薬局が出てくる恐れがあります。
かかりつけ薬局への報酬変更の影響
かかりつけ薬局としての機能を果たすためにも、長時間の開局や在宅業務、認定薬剤師制度の仕組みなど、課題は山積みとなっています。
健康サポート薬局についても、すべての薬局が直ちに行えるような内容ではないので、スケールメリットの無い個人薬局なども今後はどうなるか不透明です。
現在の調剤報酬改定においては、原資(薬局に与えることのできるお金の総額)は変えずに点数を評価・適正化していることが多く、基本料を下げる代わりに、その分をかかりつけ機能の評価に置き換えているという実態があるのです。
かかりつけ業務を行ったからこれまでの報酬+αがもらえるのではなく、これまでの報酬が下がり、かかりつけ業務を行うことでようやく従前の収入となるのです。
今後は、かかりつけ業務が出来ず、後発品の置き換えも進まない薬局は淘汰されていくかもしれません。
ドラッグストアの将来性
ドラックストアは、一部の調剤部門を除けば、調剤報酬に依存せずに収益を上げることが可能です。
政府も、国民医療費の圧縮のためにセルフメディケーションを推奨しているので、国が応援してくれていると考えることも出来ます。
ドラックストアの多くは右肩上がりで成長を続けており、10兆円産業を目指して調剤事業の拡大や、セルフメディケーションを目指した店舗を展開しているのです。
今後はセルフメディケーション税制などの取り組みにあるように、OTCを購入する機会は増えていくと考えられています。
24時間営業の店舗を増やすなどの取り組みも行っており、国民の健康維持には必要不可欠な存在となっていくことでしょう。
調剤薬局とドラッグストアに今後求められること
今後の保険調剤のテーマは、「地域医療」と明言されています。
調剤薬局では「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」などの取り組みも具体化してきているので、これまでの「門前薬局」から「かかりつけ薬局」へと形を変えていくと考えられます。
在宅医療などを中心に、1人の患者様に対するアプローチの方法を変えていかなくてはならないのです。
ドラックストアにおいては、OTCを扱うことができるので、患者様の悩みをその場で解決することができるという強みがあります。
調剤部門にも積極的に参入して、患者様の健康を予防の段階から総合的にサポートしていくことが、今後の指針となっているのです。
薬剤師として、調剤薬局とドラッグストアのどちらに将来性を感じるか
薬剤師として、ドラックストアの方に将来性を感じている方が多いと言われています。
調剤だけではなく、OTCを取り扱えるということは、ドラックストアの大きな強みと言えるのです。
ドラックストアでは薬剤師の人数が不足していることから、比較的高額な給与で募集を行っていることも多く、将来性を感じる一因となっているでしょう。
一方で、調剤薬局では毎年の調剤報酬改定なども目されており、ダウントレンドにあることは間違いありません。
直ちにすべての調剤薬局が無くなることは考えられませんが、在宅業務などを中心に取り組み方を変えていかなくてはならないでしょう。
薬剤師が今後生き残っていくために必要なことは何か
今後は、生き残っていく薬剤師は、様々な取り組みを積極的に行っていく薬剤師であると言われています。
薬剤師はこれまでのように調剤だけをしていれば良いというのではなく、調剤薬局であれば在宅業務、ドラックストアであればOTC業務など、様々な勉強をしていくことが求められているのです。
超高齢化社会を前に、国は様々な政策を打ち出してきています。
我々薬剤師は国のメッセージの本質をとらえて、柔軟に対応をしていかなくてはならないのです。
将来性のある薬剤師になるためには、5年後、10年後を見据えて薬剤師としてのキャリアを築いていかなければいけません。
各年代別にどのようなキャリアを築いていけばいいのかを下記の記事にまとめました。
ご自身の将来性が気になる薬剤師さんはご覧ください。