薬剤師はパート・アルバイトの時給も高いので、ダブルワークという働き方が可能な職業のひとつです。
管理薬剤師であれば一か所の薬局で働くことが強制されてしまいますが、勤務薬剤師であれば複数の薬局に勤める方がスキルアップにもつながるので、オススメな働き方といえます。
今回は、薬剤師のダブルワークについてご説明させていただきます。
好きなところから読む(クリック可)
薬剤師のダブルワークとは何か
ダブルワークとは、2か所もしくはそれ以上の職場に、同時に雇用契約を結ぶことを指します。
薬剤師の場合は大別すると次の2つのパターンに分けられます。
正業+副業の場合
正社員としての正業を持ちながら、+αで副業で働く場合です。
副業として扱われることが多いですが、広義ではダブルワークといえるでしょう。
薬剤師の場合は、企業のDIの薬剤師として月~金で勤めていて、土曜日だけ調剤薬局で働く。
病院の正社員+夜間にドラッグストアでアルバイトなどです。
あくまで、正業があり、その+αでパートやアルバイトといった形態です。
職種を問わず働いていくことができるのも特徴です。
パート・派遣の掛け持ちの場合
一般的に認知されているダブルワークとは、正社員としての本業を持たず、パートや派遣を組み合わる働き方になります。
“掛け持ち”と呼ばれることの方が多いかもしれません。
「パート+派遣薬剤師」という組み合わせが多いですが、「パート+パート」や、まれに派遣+派遣などといった働き方もあります。
調剤薬局同士のダブルワークでは、月水金はA薬局で、火木はB薬局といった形で勤務することが多いでしょう。
薬剤師のダブルワークはどんな働き方ができるのか
薬剤師のダブルワークでは、個人の状況に合わせて働き方を自由に選択できます。
例えば、下記のような選択肢をとることができるでしょう。
- 普段勤務している薬局が午前中までの場合に、午後だけのパートとして他の薬局を組み合わせる
- 稼ぎたいときに、日勤+夜間勤務で勤務時間を増やす
- スキルアップを目指して、パート+派遣で複数科目を経験する
自分で薬局を立ち上げる予定の方では、お金を貯める目的に加えて、様々な薬局のシステムを自分の薬局に取り入れるため、ダブルワークや派遣を組み合わせた働き方をすると良いと言われています。
薬剤師のダブルワークは「パート+派遣」がおすすめ
薬剤師のダブルワークとして最もポピュラーでおすすめなのが、「パート+派遣」という働き方です。
なぜ「パート+パート」ではなく、「パート+派遣」なのでしょう。
その理由として、次の2つのメリットが挙げられます。
1「パート+派遣」ダブルワークは勤務時間と収入のバランスがとりやすい
パートと派遣を組み合わせることで、勤務時間と収入を柔軟に調整できます。
その理由を知るため、まずは派遣とパートの違いを見てみましょう。
派遣薬剤師の場合
収入のみを追い求める場合、派遣薬剤師としてフルタイムで働くのが最も高収入でしょう。
高収入を求め、ドラッグストアを退職して派遣薬剤師として働く方もみえます。
パート・アルバイトの時給は2,000円代前半が大半なのに対し、派遣は時給3,000円代がボリュームゾーンになります。
時給4,000円以上の求人も存在します。
パート・アルバイトの実に1.5倍以上の時給ですね。
ただし、派遣先は忙しい薬局を転々とすることが多いので体力的にも能力的にも厳しいものになります。勤務時間はパート・アルバイトより融通を効かせなければなりません。
パート・アルバイト場合
一方でプライベートを最優先する場合、勤務時間を限定してのパートかアルバイトという働き方が最も柔軟に働くことができます。
育児しながら働くママ薬剤師さんなどがその例ですね。転勤の心配もありません。
当然ながら、この働き方が最も収入が低くなります。
ダブルワークで両者のいいとこどりをする
「パート+派遣」のダブルワークは、両者のいいとこどりをした働き方ができます。
普段はパートで働いているけど、週1くらいはガッツリ一日フルタイムで働いて稼ぎたい。
その場合、どうせフルタイムで働くならば、より時給の高い派遣の方がお得。
それが“パート+派遣”というダブルワークになります。
毎日派遣では体力的には辛いけども、適度にパートをはさむことで忙しさにメリハリをつけるということもできます。
このように自身の都合に合わせて勤務時間と収入を柔軟に調整できるのが「パート+派遣」ダブルワークのメリットといえるでしょう。
「パート+派遣」で収入を安定化できる
パートに派遣を組み合わせることで、収入を安定化できるメリットも見逃せません。
パートの収入はシフトの増減に左右され、安定しません。
インフルエンザの流行する冬などの繁忙期はシフトが増えるものの、薬局が暇になる時期ではシフトを削られることもあります。
パートのシフトが少ないときに派遣薬剤師として働くことで、収入を安定させることができます。
2「パート+派遣」ダブルワークはスキルアップしやすい
パート薬剤師の場合、正社員と異なりヘルプは無いことが多く、基本的には同じ店舗のみで勤務をすることとなります。
経験できる処方箋の知識にも限界があるでしょう。
しかし、派遣薬剤師であれば複数の職場を渡り歩くことができるので、より多くの処方箋に触れることができるのです。
ダブルワークのメリット
ダブルワークは何のために行い、どんな人に向いているのでしょうか。
同じ職場で働けばいいのに、なぜわざわざ気苦労も増える複数の職場で働くという選択をするのでしょう。
そこには次の2つのメリットがあります。
1ダブルワークで収入アップ
薬剤師のパート・アルバイトは時給が良いです。ボリュームゾーンは2,000円代前半あたりです。
薬局薬剤師が、普段勤務している薬局が午前中までの日に、午後だけパートをするとしましょう。
仮に時給2,000円として、週1で5時間働くだけでも4万円にもなります。なかなかの金額ですね。
それ以外にもよくある例としては、次の2つでしょうか。
- 病院薬剤師が、週2~3日のペースで20時から24時などの時間に深夜アルバイト。
病院薬剤師さんは給料が安いので、深夜や土日の空いた時間に、ドラッグストアでアルバイトを掛け持ちしている方が多いです。 - パート薬剤師さんが収入アップを狙って、週1だけ派遣
お子さんが小さいうちはパートで勤務時間を減らしていたけれども、お子さんが大きくなって働く時間を増やせるとなったときに、派遣を取り入れるママ薬剤師さんも多いです。
2ダブルワークでスキルアップ
普段は企業にお勤めの方では、臨床のカンを忘れてしまうことのないように調剤経験を積んでいくことができます。
本業に差しさわりのないよう、土曜の午前のみ薬局でアルバイトという方もみえます。
薬局同士のダブルワークの場合では、ダブルワークをすることで普段とは異なる科目の処方箋に触れることができるというメリットがあります。
今後の薬剤師は「かかりつけ薬剤師」として様々な処方箋の知識が必要不可欠となってきます。
従来以上にスキルアップに熱心な薬剤師さんも多いでしょう。
多くの薬局では門前の病院・クリニックの科目により、経験できる処方箋は自ずと限られてきます。同じ処方箋しか経験出来ないこともあるでしょう。
ダブルワークで別の薬局に勤めることで、薬剤師としての引き出しを増やすことができるのです。
例えば、普段勤務しているA薬局では小児科と外科しか経験できないが、B薬局でも働くことで、内科や消化器内科の経験ができるといった具合にです。
ダブルワークのデメリットと注意点
これまでダブルワークでできること、メリットをご説明してきました。
しかし、ダブルワークを行う上でのデメリット・注意点もあります。ダブルワークを行う際には、次の4点に気をつけましょう。
それぞれの職場の理解を得なくてはならない
ダブルワークをするということは、他の薬局でも働くこととなるため、メインで働いている薬局での勤務日の柔軟性がなくなってしまいます。
インフルエンザなどで人手が足りないなどの緊急時に、急遽出勤をすることが期待できなくなってしまうのです。
また、近隣の薬局に情報を漏らされる可能性もあることや、引き抜かれてしまうリスクも伴うので、雇用主も良い顔をしないことが多いのです。
大手の場合では就業規則によってダブルワークが禁止されている場合もあるので、確認をしなくてはなりません。
それぞれの職場の理解を得ることは必要となるのです。
ダブルワークによって薬局のルールや薬の場所を混同してしまうことがある
薬局では薬袋の書き方や業務フローなど、それぞれの独自のルールが存在しています。
複数の薬局で勤務をしていると、ルールが混ざってしまうことがあるのです。
薬の場所や在庫についても混同してしまうことがあります。
患者様からとっさに「この薬ある?」と聞かれても、即答できなくなってしまうことがあるのです。
本業に差し支えないレベルに抑える
メインとなる職場がある場合では、もう片方の職場は1~2日程度にとどめておく方が無難と言えるでしょう。
本業の日数を減らして他に行くのではなく、本業の日数は変えずに+αで働く方が無難と言えます。
確定申告が必要になる
ダブルワークを行うということは2か所以外の職場で給料をもらうため、現在の税法上では確定申告を行わなくてはなりません。
サブの職場でも、忘れずに源泉徴収票をもらっておきましょう。
単発派遣で働くことができるか条件を確認しておく
派遣とパートを組み合わせたダブルワークで働く場合、派遣では週1日~2日のシフトになることが多いと思います。
そのような少ないシフトでの派遣の求人は“単発派遣”又はスポット派遣(以下、単発派遣で統一します。)というくくりになります。
労働派遣法により、派遣会社との雇用契約日数が“30日以内、かつ労働時間が週20時間未満の雇用契約で働く派遣は「単発派遣」として扱われます。
ここで注意が必要なのは、誰でも単発派遣で働くことができるわけではないことです。2012年に労働者派遣法が改正され、単発派遣が原則禁止になったからです。ただ、単発派遣で働くことができる例外があります。
単発派遣で働くことができる条件
- 世帯年収が500万円以上で、主たる生計者でない人
例えば、パート勤務のママ薬剤師さんで旦那さんと年収が合わせて500万円以上あり、主たる生計者は旦那さんの場合、このママ薬剤師さんは単発派遣で働くことができます。 - 年収500万円以上の人
- 雇用保険の適応を受けない学生
- 60歳以上の人
ご自身の年収が500万円以上あれば、副業として単発派遣で働くことができます。
上記の条件を満たしているか確認してから、単発派遣を探すようにしましょう。
女性薬剤師はダブルワークが多い
男性薬剤師では管理職を目指す傾向にあるので、ダブルワークの経験があまり無いかもしれません。
しかし、退職や転職を経験された女性薬剤師さんは、多くの方がダブルワークの経験があるようです。
薬剤師がダブルワークを行うことには様々なメリットがあるため、薬剤師の世界ではダブルワークは古くからトレンドなのです。
ここでは、女性薬剤師に多い、いくつかのパターンをご紹介します。
1ママ薬剤師がブランク明けのスキルアップのためにダブルワーク
新卒で入社した女性薬剤師の方のよくある例としては、出産時に退職をして、お子様が大きくなってからパートで薬剤師を再開するという働き方が挙げられます。
はじめは週1、2日くらいのパート勤務でスタートすることが多いでしょう。
仕事にも慣れてきて、そろそろ働く時間を増やそうかなと思ったとき、同じ薬局でシフトを増やすのではなく、ダブルワークという選択肢をとることがあるのです。
多くのママ薬剤師さんは、しばらくブランクがあれば正社員として復帰するのも不安になるようです。
ダブルワークで複数の科目を経験することで、薬剤師としてのスキルアップを行うことができるのです。
2家持ちで、まったり働くためのダブルワーク
実家暮らしの方では、正社員の特典である「家賃補助」が必要ないため、敢えて正社員にこだわる必要がありません。
プライベートを優先したい方の場合では、若いうちからパートや派遣でダブルワークという選択肢をとる方もいるのです。
既婚子無しの女性が、主婦業の傍ら、パート+派遣でダブルワークをする場合があります。家のことをしなければならないので、正社員や派遣でフルタイムで働くことは厳しいが、子供ができるまでの間、しっかりと稼ぎたいと考える方が多いようです。
3ベテラン薬剤師さんが小規模薬局で働く場合のダブルワーク
若いうちは正社員として働くことがほとんどですが、ある程度年次を重ねると、キャリアプランを考えるようになります。正社員のまま管理職になるという選択をしなかった方は、退職し次の就職先を探します。その際、小規模薬局でダブルワークの選択をする方が多いのです。
ではなぜ小規模薬局なのでしょう?
それは、ベテラン薬剤師と小規模薬局のニーズが一致しているからです。
ある程度年次を重ねた薬剤師は、給料もそれなりにもらいたいと考えます。一方薬局側はというと、新卒薬剤師の就職先で最も多いのは大手の調剤薬局です。福利厚生が充実しており、倒産しにくいと思われる大手を選ぶ安定志向の学生さんが増えたからです。小規模薬局は新卒の採用が困難なので、中途採用を積極的に行っています。
そのため、大手に比べて小規模薬局の方が給料を高めに設定している場合が多く、ベテラン薬剤師はダブルワークの候補として小規模薬局を選ぶのです。
個人薬局としても、正社員1人を雇うよりパート2人の方が社会保険料などの関係でお得であるため、正社員よりもパートを好む傾向があります。
個人薬局は、ベテラン薬剤師さんの雇用の受け皿となっているのです。
ダブルワークにオススメの転職サイト
派遣とパートを組み合わせたダブルワークで働く場合、派遣では週1日~2日のシフトになることが多いと思います。
そのような少ないシフトでの派遣の求人は“単発・スポット派遣”というくくりになります。
労働派遣法により、派遣会社との雇用契約日数が“30日以内、かつ労働時間が週20時間未満の雇用契約で働く派遣は「単発・スポット派遣」として扱われます。
一口に派遣といっても、その働き方にはいろいろとあるのです。
単発派遣を取り扱っている派遣会社は、アプロ・ドットコムとファル・メイトくらいです。
大手派遣会社のファルマスタッフやヤクジョブ(クラシス)もかつては単発派遣を取り扱っていたのですが、最近は単発派遣を取り扱いをやめてしましました。
派遣会社として利益がでにくいというのが理由のようです。
では実際にどのような単発派遣の求人があるのかみてみましょう。
単発派遣の求人数がもっとも多いアプロ・ドットコムで調べてみました。
こちらのように、週1日で時給3,000円の求人や、
スポットで1日だけの単発派遣もありますね。
普段はパートとして働きつつも、都合のつく日だけ時給3,000円以上の単発派遣で働けば、ちょっとした収入アップになりますよ。
\無料登録して単発派遣の求人情報を受けとってみましょう/
アプロ・ドットコム公式サイト
パート・アルバイトの求人数の多い転職サイト
転職サイト | 求人数 | 高時給 |
リクナビ薬剤師 | 37,864件 | 24,729件(*1) |
マイナビ薬剤師 | 29,142件 | 不明 |
薬キャリ | 18,649件 | 9,328件(*1) |
ファルマスタッフ | 15,749件 | 時給2000円以上 ⇒13,533件 時給2500円以上 ⇒3,885件 時給3000円以上 ⇒643件 |
薬剤師転職ドットコム | 6,068件 | 時給2000円以上 ⇒5,652件 |
*1:高時給の定義は不明。当サイトの調査では最低時給は1,800円からでした。
総求人数では、リクナビ薬剤師とマイナビ薬剤師が断トツです。しかし、マイナビ薬剤師では高時給の求人数は不明です。
ファルマスタッフであれば、時給額ごとに求人を探すことができます。時給にこだわってパート・アルバイト先を探したい薬剤師さんはファルマスタッフの利用がオススメかもしれませんね。
各転職サイトの登録先
- リクナビ薬剤師:https://rikunabi-yakuzaishi.jp/
- マイナビ薬剤師:https://pharma.mynavi.jp/
- 薬キャリ:https://agent.m3career.com/
- ファルマスタッフ:https://www.38-8931.com/
- 薬剤師転職ドットコム:https://www.ph-10.com/
まとめ
ダブルワークという働き方は、一般的な職業の正社員では馴染みがないでしょう。
しかし、働き方改革が叫ばれて久しい昨今、薬剤師もフレキシブルな働き方にシフトしていく時代がきています。
パートの場合わざわざ複数の店舗で働くよりは、1か所に集中して勤務することで時給を上げることが得策とされていますが、はたしてそうでしょうか?もう一度勤務時間と給与のバランスを見直してみることをオススメします。
また、薬剤師では「スキルアップ」が必要不可欠です。複数の薬局で勤務することで経験値を向上させることができるダブルワークはとても魅力的な働き方ではありませんか?
スキルアップを目指している方は、ダブルワークという方法も一度検討してみてください。
ダブルワークという新しい働き方で、効率的に働いて充実した毎日を送りましょう。