これまでは薬局での調剤がメインだった薬剤師の業務は、時代の移り変わりと共に在宅での管理や指導へと変化してきています。
今後も薬剤師として生き抜いていくためにはその変化に対応できなければなりません。これまで在宅医療を経験してこなかった薬剤師にも、在宅での対応が求められる状況は増えてきています。
そこで今回は、在宅薬剤師の求人を探す薬剤師が知っておきたいことと気を付けるポイントを、実際に在宅薬剤師として働く筆者の経験を元にご説明いたします。
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在宅薬剤師の求人数は多いのか
これほど在宅医療の必要性が叫ばれている中でも、実際はコストや人員的な課題が多く、在宅医療を実施できていない薬局もまだまだ多くあります。
しかし、「かかりつけ薬剤師」や「健康サポート薬局」等、地域密着型の薬局の発展が期待されている現状を捉えると、在宅医療に取り組まなければ薬局の存続の危機にさらされてしまうという側面もあります。
在宅医療未経験の薬局が新たに在宅医療を始めようとしても、数年前から在宅医療に取り組んでいる薬局との間には経験や実績に大きな差が開いてしまっています。
そこで、即戦力としての活躍を期待して、これまでに在宅医療を経験してきた薬剤師が求められるのです。
在宅薬剤師の求人数
厚生労働省によると、2017年1月の時点で在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険)の算定薬局は19,437軒、居宅療養管理指導費等(介護保険)の算定薬局は5,863軒と発表されています。
薬局のおよそ3軒に1軒が在宅業務を行っていることがわかります。
続いて実際の求人数を見てみましょう。
在宅薬剤師の求人を最も多く保有している薬キャリのデータを見てみると、正社員の求人数44,960件に対して、在宅の求人数は10,024件と薬剤師の求人の約1/4.5が在宅医療を経験できる求人であることがわかります。
求人の種類 | 求人数 |
正社員の求人数 | 45,016件 |
調剤薬局 | 9,083件 |
調剤併設ドラッグストア | 756件 |
OTCのみドラッグストア | 109件 |
病院 | 55件 |
企業・その他 | 25件 |
この表を見てみると、在宅薬剤師の求人の9割は調剤薬局であることがわかります。
在宅医療の店舗の割合が高い企業
株式会社ケアレビューの調査によると、在宅患者調剤加算の届出薬局数の割合が高い大手調剤薬局は、薬樹やあさひ調剤、日本調剤・アインファーマシーズなどです。これら調剤薬局チェーンでは70%以上の店舗で在宅患者調剤加算を算定しています。
特に、薬樹やあさひ調剤では90%以上の店舗で在宅患者調剤加算を算定しています。
一方ドラッグストアでは、スギ薬局、CFSコーポレーション、ココカラファインなどが在宅患者調剤加算を算定している店舗数が多いです。
ただし、大手調剤薬局チェーンほど在宅患者調剤加算を算定している店舗の割合は多くなく、30%~40%の範囲に留まっています。
在宅薬剤師に転職したいのでしたら、これら企業を選択するといいでしょう。
在宅薬剤師についてのよくある勘違い
在宅医療未経験者の方からの在宅薬剤師のイメージを聞くと、相当ハイレベルな印象を持たれているように感じることがあります。
「医師に同行することが必須で…その現場で直ちに薬学的判断を下し、医師に薬の選択や使い方の助言もして…」などといった感じにです。
在宅薬剤師は実際に医師に同行することもありますが、常にというわけではありません。
本来は医師や看護師、介護支援専門員や患者さんのご家族とより強く連携し、カンファレンス等を通じて治療の方針を明確に共有していくことが理想的なのかもしれませんが、実際はまだまだ在宅医療も発展途上な段階です。
薬の飲み忘れ対策や保管方法の工夫等、ちょっとした問題点を解決するために、少しずつできることから始めていくケースの方が多いです。
在宅医療未経験者が在宅薬剤師に転職する前に知っておきたいこと
在宅薬剤師を目指す方に向け、在宅薬剤師にはどのような苦労があるのか、どのような仕事内容なのかをご説明します。
在宅薬剤師の苦労
在宅薬剤師が苦労することとして、患者さんのご家族や介護ヘルパーとの連携が必要とされる点が挙げられます。
医師の治療方針を処方内容から読み取り、介護者の方から生活上の注意点を聞いた上で、実際にどう取り組めば患者さんのQOLが向上するのか。
正しく薬を使用していただくための工夫が必要な場合が多くあり、その度に臨機応変な判断力が求められます。
在宅薬剤師の仕事内容
患者さんのご自宅や入居先に薬剤師が訪問し、医師の処方せんをもとに、お薬のセットや薬剤管理を行います。
服薬に関するご相談に応じるほか、体調や副作用のチェック、残薬などを調整します。
その他にも在宅薬剤師の仕事内容については「在宅薬剤師の役割と仕事内容」で詳しく説明しています。ご参考ください。
在宅薬剤師としての経験は給料アップに結び付くのか
今後、薬剤師が在宅医療に携わる機会は増々多くなっていくでしょうし、在宅医療のスキルを兼ね備えた薬剤師は評価され、転職の際にも重宝されるでしょう。
しかし、それがすぐに給料アップにつながるわけではありません。
国が医療費を削減したいという流れは今後も続くことが予想されます。
在宅医療は調剤報酬の改定で評価が上がっていくように言われていますが、急激に報酬が上がることは予想しにくい状況ですし、在宅に取り組む薬局はそれ以上に様々なコストもかかっています。
いずれにせよ、これから先どんどん医療費は削られていく一方ですので、在宅医療に取り組むことで給料もアップするとは限りません。
しかし、地域医療の担い手として、在宅薬剤師のスキルアップは必要不可欠です。
地域に対して薬の適正使用を積極的に発信していける薬局でなければ、薬局自体が生き残れない時代になってきています。
自力での通院が困難な方に対しても、訪問による薬剤管理指導を通じて関わり、地域から愛される薬局を作っていくことが求められます。
そこに薬剤師の在宅医療のスキルが必要となります。
長期的な将来性を考えると、在宅に取り組んでいる薬局とそうでない薬局には差が生まれ、給料面でも開きが出てくることになるでしょう。
在宅薬剤師の求人探しの注意点
在宅薬剤師の求人を探すときに気を付けたいポイントがいくつかあります。
順にみていきましょう。
オススメの求人先
求人内容では在宅医療を実施していると表記しつつも、実際は薬を配達して届けているだけという薬局もあるようです。
実際に医師の指示の下で訪問計画を立てて患者さんと契約を交わし、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」または「居宅療養管理指導料」を算定して訪問薬剤管理をしている薬局がオススメです。
また、店舗単独で在宅医療を実施しているだけでなく、会社全体で熱心に在宅医療に取り組んでいる会社がオススメです。
在宅医療は窓口での服薬指導と比較して、時間もコストも多くかかりますし、採算が合わないケースもあります。
利益優先で考えると現段階では経営面で在宅医療を実施するメリットは少ないので、あくまでも在宅医療の将来性を理解した上で推進している会社は安心できます。
在宅薬剤師が忙しすぎないかを確認する
在宅薬剤師の仕事内容は一包化や粉末調剤が多いなど、その作業量は多く、業務の分業化や作業効率を意識していない薬局では簡単に残業が増えてしまします。
どの程度の残業が発生しているのかは事前に確認しておきましょう。
遠距離の配達がないかも確認しておきたいところです。
仮に片道一時間もの距離の施設に配達しているとしたら、配達だけで2時間もかかってしまします。
薬剤師の残業が増えることが容易に想像できてしまいます。
参考記事 在宅薬剤師の仕事の忙しさとワークライフバランスについて
在宅薬剤師に転職するなら早いほうがいい
数年前までは在宅薬剤師は貴重な存在だったため、どの会社も欲しい人材でした。
しかし最近では多くの薬局が在宅医療を実施し始めているため、ただ経験しているというだけではなく、より高い専門性が求められています。
在宅療養支援認定薬剤師という資格を取得する薬剤師も増えてきています。
薬剤師も今後は緩和ケア等、患者さんの人生そのものに寄り添えるようなプロフェッショナルであることが求められますので、早いうちに在宅業務を経験しておくことをオススメします。
在宅薬剤師に転職するときの求人探しの注意点|まとめ
在宅医療と聞くと何だか大変な仕事のように感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、患者さんと直接関わるような仕事をしたい方にはとてもやりがいのある仕事です。
自ら直接患者さんの元へ赴き感謝の言葉をかけていただくことは、自身のモチベーションにも繋がります。
在宅薬剤師として活躍したい方は、是非とも在宅医療を行っている勤務先への転職を検討してみてください。
在宅薬剤師の求人を探すのにオススメの転職サイト
今や転職する薬剤師のほとんどが利用している転職サイト。求人探しから給与交渉まで幅広くサポートしてくれます。
ブラックな職場を避け、在宅の経験できるしっかりとした薬局に転職するためには、転職先の職場事情に詳しい転職サイトの利用がオススメです。
そんな転職先の職場事情に詳しい転職サイトは次の3社です。
職場事情に詳しく、交渉力も高いマイナビ薬剤師
まず第一はマイナビ薬剤師です。
マイナビ薬剤師はとにかく職場事情に詳しいです。ブラックな求人を避け、求職者に相性のいい求人を選んで的確に紹介してくれます。
最近ではドラッグストアでも在宅医療に取り組む企業が増えてきましたが、そんなドラッグストアの求人を豊富に取り揃えているのも、マイナビ薬剤師の特徴の一つです。
調剤薬局のことは調剤薬局に聞こう!ファルマスタッフ
続いてオススメなのは、ファルマスタッフです。
ファルマスタッフは大手調剤チェーンである日本調剤が出身母体である利点を生かし、調剤薬局の業務内容に詳しいです。
もちろん在宅医療とはどういうものかもよく理解しているので、在宅の仕事内容などについても安心して相談できます。
また、マイナビ薬剤師同様、現場に足しげく通い、職場事情に詳しいのもポイントです。
年収アップに強い!薬剤師転職ドットコム
最後にオススメなのが、薬剤師転職ドットコムです。
ファルマスタッフ同様、大手調剤チェーンが出身母体であるので、調剤薬局の業務内容に詳しいです。
それだけではなく、薬剤師転職ドットコムの最大の特徴は、中小調剤薬局への転職による年収アップに強いことです。
在宅医療をやってみたいけど、年収もアップしたいと思っている方にはオススメの転職サイトです。

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