臨床薬剤師として患者さまに貢献したいと思ったとき、多くの薬剤師は第一希望の転職先として総合病院を希望すると思います。
多数の診療科がある総合病院なら、他の医療機関よりも幅広い経験や効率的なスキルアップが期待できるし、福利厚生も他の医療機関に比べて良いというのが大きな理由ではないでしょうか。
ただ、期待は膨らむ一方で、「総合病院に転職したいからと言って、簡単に転職できるものではない」というのが薬剤師さんたちの一番の悩みどころですよね。
何を隠そう、この私も総合病院に勤務するまで、転職活動にとても苦労した薬剤師の一人です。
今回は、入職が厳しいと言われている総合病院への転職をどのように成功させたらよいのか、私の経験を含めて書いていこうと思います。
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総合病院への転職は難しいですか?
そもそも総合病院への転職は難関なのでしょうか?
私の経験を基に総合病院への入職の難しさを検証してみます。
総合病院は新卒文化が根強い?
総合病院は新卒文化が強く、中途採用は難しいと聞いたことがある人も中にはいると思います。
実際はどうなのでしょうか。
私は2つの総合病院に勤務しましたが、そのうちの一つは正社員16名のうち15名が新卒からそのグループの総合病院に入職した薬剤師、1名が中途採用で入職した薬剤師でした。
また、パート薬剤師に関しては、4名のうち1名が新卒採用、残り3名は中途採用でした。(ちなみに私は中途採用のパート薬剤師のうちの一人でした)
新卒採用の1名のパート薬剤師は家庭の事情で正社員からパート社員になった人でしたから、正社員として総合病院に入職するには、やはり新卒のほうがかなり有利ということになりますよね。
それでは私が勤務していたもう一つの総合病院は、どうでしょうか?
私がその総合病院に勤務し始めたころは、正社員19名のうち18名が新卒からそのグループの総合病院に勤務した薬剤師、1名が中途採用の薬剤師だったと記憶しています。
そしてパート薬剤師は、3名のうち2名が新卒からの採用者、1名が中途採用者でした。
実はこの中途採用のパート薬剤師というのが私でしたが、当時私の年齢は24歳で、大学を卒業してから1年しか経っていませんでしたので新卒とほぼ同等に扱われたことが考えられます。
その後、新たに採用された正社員1名もパート職員4名も、新卒の薬剤師とほぼ同等の年齢でした。
これらデータを見ると総合病院の「新卒文化」というものは存在していると言わざるを得ませんよね。
総合病院の採用試験の募集要項にも「27歳まで」など、かなり若い年齢層を求めている求人をいくつか見たことがあります。
このことからも新卒に近い年齢であればあるほど、総合病院に転職しやすいことが分かるのではないでしょうか。
総合病院の求人は少ない?
次に総合病院の求人の数に注目してみましょう。
保険薬局の求人は、リクルート広告で見ない時がないほど多く、たいていどこかの薬局が募集をかけているイメージです。
一方、総合病院というのは保険薬局とは違い全国的に数が少ないです。よほど人手不足で人気のない病院でない限り、毎週のように新しい求人が出るというのは考えられません。
ちなみに政府の統計(医療施設動態調査(平成30年3月末概数))によると、全国の全病院数は8,389件。そのうち病床数400床以上の大規模病院は約2,500件しかありません。
保険薬局数の58,000件と比べてとても少ないですよね。
ある程度大きな総合病院では様々な経験ができたり、教育プログラムが整っていたり、福利厚生が良いなどのメリットがあります。薬剤師は一度入職するとなかなか辞めないという特徴もあるのです。
総合病院の数が少ないうえに、職員のターンオーバーもあまり期待できないことを考えると、求人が出ること自体がかなり珍しいと簡単に想像できるのではないでしょうか。
総合病院への入職は倍率が高い?
ハッキリ言いますが、総合病院への正社員としての倍率は、その病院が有名なほど、都心に近いほどとても高いです。
先ほどお伝えしたように、求人が出ること自体が少ないですから、その少ないチャンスに薬剤師が群がってしまうのも無理はありません。
私が勤務していた総合病院の一つは全国でもかなり有名な病院だったせいか、たった一人の正社員の採用を手に入れようと、試験会場には十数名の薬剤師が集まっていました。
他の総合病院でも、多くの薬剤師が採用試験を受けた結果、結局受かったのは新卒の男性薬剤師一人だったということも聞いたことがあります。
新卒文化が根付く総合病院で、多くの応募者の中から正社員として中途採用してもらうのは、病院側に何か利益をもたらすような秀でた魅力を持っていない限り、かなりの難関と言えそうです。
総合病院への転職はかなり難しいということになりますか?
ここまで、総合病院に正社員として転職することがとても難しいということについて書いてきました。
総合病院に勤務したいと希望を持っていた多くの薬剤師さんがここまでの記事を読んであきらめモードになってしまったのではないでしょうか。
確かに正社員としての転職は保険薬局への転職ほど簡単ではありません。
しかし、私のように少し違う方法で総合病院に転職を果たした薬剤師もいますし、転職エージェントのサポートのおかげで総合病院へ転職できたという例もあります。まだまだあきらめる必要はないと思います。
次の項目では私がどのように転職したのかや、総合病院への転職を成功させた薬剤師の例を取り上げていきます。
総合病院への転職のための求人を探す方法とは?
総合病院の少ない求人を探すためには様々な方法があります。
私が総合病院に転職できた例をはじめ、そのほかの方法もいくつか見てみましょう。
私が総合病院に転職できた方法
総合病院の求人がない!
まず私がどのようにして総合病院に転職したかについてお話しします。
私は大学の薬学部を卒業した後すぐ、総合病院へ入職することを希望していました。
しかし当時は就職氷河期。私が勤務したいと思う総合病院の求人は全く見つかりませんでした。
臨床の現場で働きたいと学生の時からずっと思ってきたのに、求人がないという現実にとてもがっかりしたのを今でも覚えています。
私は、「臨床薬剤師になるのなら、なにも総合病院に就職する必要はないのではないか」そう自分に言い聞かせ、求人が出ていたクリニックの薬局に勤めることになりました。
ハローワークにパートの求人が!
クリニックでの仕事は私が希望していた臨床薬剤師の仕事とは程遠く、クリニックに就職して数か月後、もう一度総合病院への就職を試みようと決心することになります。
決心してすぐに私は、求人広告を見たり、ハローワークに通ったりしながら総合病院の求人を探し続けました。
けれど案の定、希望の求人は全くなく、もう転職は無理かもしれないとあきらめかけていました。
そんなある日、ハローワークに行った時のことです。
いつもは「正社員の求人」を選んで検索するところを、「パートの求人」で検索してみたところ、私が勤務したかった総合病院の求人がでていたのです。
産休の職員のための期間限定求人だった
ハローワークの総合病院のパートの求人をよく読むと、それは産休職員の代理の求人で半年間の期間限定だと書いてありました。
私は、あくまでも正社員を希望していましたから、パートでしかも半年間限定の求人ならば応募する価値はないと最初は思っていました。
勤務してもすぐに辞めなければいけないなんて、精神的負担も多いと思ったからです。
しかし、クリニックでは薬剤師として成長ができないと判断した私は、そんなことを言っている場合ではありませんでした。
たった半年でも臨床薬剤師として成長できるキッカケをつかめるかもしれない。
総合病院の求人が他にない今、贅沢は言っていられないと思い直し、思い切ってパートの求人に応募することにしました。
パートの応募は私だけだった
いくら大きな総合病院の求人とはいえ、パートで半年間の限定。
よほど人気がなかったのか、それともハローワークで検索した人があまりいなかったのか分かりませんが、応募したのは私だけでした。
そのため、薬局長の面接を受けすぐに合格と言われ、早々と勤務が決まりました。
薬剤部内の薬剤師から病院の求人情報をもらう
ここで念のため言っておきますが、私は、総合病院の期間限定のパートの薬剤師になれたということを書きたかったのではありません。
この話には続きがあります。
総合病院に勤め、そろそろ期限の半年が近づこうとしていたころ、同じ薬剤部の先輩薬剤師から「ある総合病院でパートの薬剤師を募集しているから受けてみては?」と言われました。
公開していない求人情報で、その病院に勤めている薬剤師がたまたま知り合いだったことから入手できたものだそうです。
知り合いの薬剤師が〇〇病院で働いていて聞いたんだけど、今パートの薬剤師を募集しているんだって。ここの病院と同じくパート勤務になってしまうけれど、ここみたいに期間限定ではなく、ずっと働けるみたいだから良いと思うよ。もし興味があったら直接薬剤部長に連絡してみて。
総合病院の求人情報は病院内でしか入手できないこともあるんだとはじめて知り、期間限定の仕事でも応募してよかったと改めて思いました。
人気の高い病院にテストなしで転職!?
パートを募集していた病院は全国的に有名な病院で、簡単には転職できないところでした。
私はこんなチャンスは二度とないと思い、すぐに薬剤部長に電話をし、面接を受けました。
そしてその結果、薬局が人手不足だったのとパートの募集だったことから、人気のある病院にテストなしで転職することができたのでした。
半年とはいえ総合病院で働いていたのなら、うちの仕事にもすぐに慣れてくれるでしょう。即戦力としてがんばってください。
薬剤部長からそう言われました。
たった半年間の病院勤務でも、経験をしておくと予想外に役に立つこともあるのですね。
数年後、パートから正社員に昇格できる?
私はパートとして就職しましたが、病院では正社員と同じように教育してもらうことができました。
そして1年後には正社員の薬剤師とほぼ同じ仕事をできるまでに成長することもできました。
このように満足して仕事を続けてきた私ですが、もしかしたら「同じ仕事ができたと言っても、所詮パートでしょ?」と思う人もいますよね。
実はパートとして働きだして3年後、私は留学をするために病院を辞めてしまったのですが、私と同時期にパートで働きだした2人のパート職員がその後正社員として昇格しています。
その点、パートで働いていた人は仕事は一人前にできるし、人柄もわかっているのでリスクを最小限に抑えられる。
これが、元パート職員が正社員として選ばれた理由だそうです。
与えられたチャンスは最大限生かしたほうがいい
この私の例は、たまたま起こったことが偶然良い結果になっただけかもしれませんので、他の病院でも同じようなことが起こるとは言いません。
しかし、たとえ正社員の採用ではなくてもそのチャンスをつかみ続ければ、正社員としてのポジションをゲットできる可能性もありますし、もしできなくても臨床薬剤師として成長につながるかもしれないということです。
正社員への面接を受けて転職するという正攻法でなくても、将来的に正社員になれる変化球の方法もあるということはぜひ頭に入れておいてくださいね。
転職サイトには総合病院の求人はでてこない
転職活動するとなったら、まず思いつくのは薬剤師向けの紹介会社(転職サイト)を利用することですよね。
しかし、総合病院・大病院の求人はまず転職サイトにはでてこないんです。これは最近転職エージェントの方に教えてもらったのですが。
総合病院・大病院の場合はわざわざ紹介会社を使って費用をかけなくても、求人が集まるからではないかということでした。
確かに私が勤務していた病院でも、前述したように1名の求人枠に十数名の応募がありましたからね。
わざわざ紹介会社に高い紹介料を払わなくて応募者が集まるなら、それに越したことはありませんからね。
県立や市立の公的病院も、公務員薬剤師採用や公募でしか人を集めないため、紹介会社に求人を出さないそうです。
公的でない大型病院は、新卒に人気だったり、自己応募する方も多いので、紹介会社を使った中途採用はあまりしていないとのことでした。
病院や病院薬剤師会のホームページのチェック
転職活動している薬剤師がよく見逃してしまうのが、このWebサイトのチェックです。
病院によっては、外部に求人を出さず、病院のホームページだけで募集しているところも何件かありますし、病院薬剤師のホームページのみで募集をかけているところもあります。
病院のホームページは転職サイトのように、検索すると求人が現れるわけではなく、病院のサイトを一つ一つをチェックして、求人情報を探さなければいけませんから、手間はかかります。
しかし、少しでも多くの求人情報を得て転職率を上げたいのなら、この方法も忘れずに行ってほしいです。
ハローワークをチェック
先ほど、「私が総合病院に転職した方法」のところでハローワークについて少し触れました。
ハローワークのみで募集している病院もある、ということが分かりましたよね。
最近はハローワークまでわざわざ足を運ばなくても、インターネットでハローワークのページを開けば求人情報が検索できるようになっています。
ハローワークのサイトでは、それほど手間をかけずに求人を確認できます。他の方法と並行してハローワークのチェックも定期的に行ってみてください。
正社員の求人だけでなくパートの求人もチェックすることをおすすめしますよ。
片っ端から電話をかけまくる
この方法はかなりの変化球だと思いますが、私の知り合いの話です。
彼もある病院にパート職員として転職したのですが、どのように求人を探したのか聞くと、
「興味のある病院に片っ端から電話とメールをした」という答えが返ってきました。
これはもう執念ですよね…。
ただ、この電話をかけるまくるという方法はもしかしたら、他にやる人があまりいないからよかっただけなのかもしれません。
多くの人が病院に電話をかけてしまったら、ヒューマンリソースの部門に迷惑をかけてしまうことにもなりかねませんから。
相手の時間を取ってしまう電話ですと、熱意を伝えるどころかこちらの印象が逆に悪くなってしまう可能性もあります。
もし連絡を取りたい場合は、電話よりもメールの方が良いという場合もあるかもしれません。
いずれにせよ、状況を見たり相手の気持ちを考えたりしながらという条件のもとに成り立つ方法だとは思います。
変化球がうまく行かない例もある
ここで、今までご紹介したパートから正社員への道という「変化球」的な手段がうまく行かなかった例についてもお話ししておこうと思います。
何年もパートをしていた薬剤師が勤務先の病院で、正社員の募集があることを知りました。
薬剤部長に問い合わせると、パートである彼女も採用テストを受けられるとのこと。
正社員を希望していた彼女は、当然その採用試験を受けることになりました。
彼女は他の正社員と同じように仕事ができましたし、その能力が認められて多くの薬剤師が彼女を頼っているほどでした。
ここまで聞くと、だれが見ても即戦力になれる彼女が採用されると思いますよね。
しかし採用されたのは大学院を卒業したばかりの男性薬剤師でした。
仕事も覚えて人柄もわかっているパート職員からの正社員の採用率は高いと言いましたが、病院の考え方やタイミングによっては、それでもとにかく新卒薬剤師、または男性職員を優先的にと考えるところもあるのだということです。
このようにパート職員になれば必ず正社員になれるということでもありませんので、その点だけは注意してくださいね。
結局、最も転職確率が高い手段ってなんですか?
ここまで、総合病院への転職の成功に近づく方法を何点か挙げてきましたが、やはり気になるのは転職成功率が一番高い方法は何なのかということではないでしょうか。
私の意見としては、転職エージェントを利用できない以上、最も効率のいい手段というのはないのではないかなと。
転職成功の確率を上げるためには、複数の方法でトライするのが一番だと思うのです。
自分のホームページにしか求人を出さない病院、ハローワークにしか求人を出さない病院と、病院により求人の募集の出し方も違うというのが現実です。
とにかく時間が許す限り、あらゆる方法で総合病院の薬剤師求人を探し、見つけたら随時応募してみてください。
ハローワーク・病院薬剤師会の公式サイト
- ハローワーク:https://www.hellowork.go.jp/
- 日本病院薬剤師:https://www.jshp.or.jp/
総合病院正社員の求人を見つけて、面接を受ければ必ず受かりますか?
保険薬局の求人の面接を受けて、受からなかったというのはあまり聞かないと思います。
それほど求人数が多く薬剤師が足りないということですが、総合病院はそういうわけにはなかなかいきません。
総合病院の正社員の採用試験には募集人数の何倍、何十倍の人が集まります。病院側の採用したい人材に合った人や、試験を受けにきた人の中で特に秀でた人でないと合格することはかなり難しいと言えます。
パート職員、嘱託職員なら人気があまりないせいか、面接なしで即採用ということもあります。臨床薬剤師として成長するチャンスを得たいのなら、ねらい目と言えるかもしれません。
まとめ
今回は、総合病院への転職を成功させる方法について考えてきました。
難関と言われる総合病院への転職ですが、できる限りの手を尽くしたり、小さなチャンスでもつかみ続けていくことで、転職成功率が高まるということ。
また、若い薬剤師であればより多くのチャンスがあることがが分かったのではないでしょうか。
総合病院に勤務すると、想像以上に多くの経験をすることができ、教育プログラムも整っていることから自分が臨床薬剤師として成長しているなと実感しながら働くことができます。
そのような貴重な経験をするためにも、ぜひ総合病院への転職成功を手にしてもらいたいです。
臨床薬剤師を目指している多くの薬剤師さんにこの記事が少しでも役に立つことを祈っています。

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