どのような仕事でも、やりがいは大切です。
それは薬剤師であっても同じ。
事実、やりがいがなく職場が合わないと感じ、転職する薬剤師は少なくありません。
逆に言えば、やりがいのある職場は働きやすいということ。
そこで現役の薬剤師は、どのような仕事にやりがいを感じているか調査しました。
アンケートにて、職場により薬剤師のやりがいが異なることがわかりました。
環境によって、やりがいの見出しやすさも違っています。
自分に合った職場や、仕事へのやりがいを見つける参考にしてくださいね。
対象者:薬剤師100人
調査方法:クラウドワークスによるインターネット調査
調査期間:2021年5月20日~5月24日
アンケートの回答全文
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1.薬剤師としてやりがいを感じる仕事内容はどのようなものですか?実際にやりがいを感じたエピソードも教えてください。
薬剤師の仕事は、処方監査に調剤・服薬指導や健康相談と様々。
職場によって、仕事内容も違います。
まずは現在の職場において、やりがいを感じている仕事内容を伺いました。
多い意見から、ランキング形式でご紹介します。
※複数回答可。掲載するご意見は、読みやすいように一部改変しています。
1位 服薬指導(病棟での服薬指導を含む)や薬剤管理 63%
先生や看護師さんからはそんな話を聞くことがなかった。薬剤師の○○さんだからこんな話が聞けた。」と言われたとき。薬剤師のPHSでなく、私のPHSに連絡がくること。
かかりつけの患者さんから何度か感謝のお手紙をいただきました。
検査値などドクターは忙しそうであまり聞けず不安だったときに丁寧に説明したら、涙を流して安心してくれた患者さんも心に残っています。
医師にでも看護師にでもなく、薬剤師である私に相談をしたいと病棟で患者さんが服薬指導の時間まで待っていてくれた時は、本当にやりがいというか幸せを感じました。
薬の相談を良くしてくれる患者さんがおり、また残薬調整なども行っていた。
私としてはそれが仕事であり、当たり前ことであったが異動になることを伝えると色々親切にしてくれてありがとうと言われた。その時、こんなにも人の役に立つ仕事なんだなと改めて感じた。
医師の診断に基づく処方薬ではあるが、なぜこの薬が出ているのか?不安に思う患者さんは多い。
効能効果や適正使用の服薬指導によって、不安な顔で来局した方の表情が安心に変わったときなど。
薬に不安がある患者様が自分の服薬指導によって不安を解消し、安心して服薬いただけた時。薬が嫌いな子供が、剤形変更やメーカー変更、服薬指導で薬を飲めるようになった時。
断トツで多い回答は、服薬指導関係でした。多くの薬剤師が自分の服薬指導により、患者さんが安心して正しく薬を使用することにやりがいを感じていました。
2位 健康相談に応じること 29%
一般的な食事指導や栄養成分、薬のことについて相談にのり、詳しく調べたり自分の知識を伝えたりしたときに、「あなたに相談できてよかった」や「詳しく教えてくれて勉強になった!ありがとう」など、言われるとやりがいを感じるし、もっと勉強しようという気持ちになる。
長年の耳鳴り、めまいという事で相談された。処方薬は継続服用の薬。
そこで、食生活と運動、いくつかのマッサージをおしえ、最後の補助でOTCを。処方薬は継続。次の週には耳鳴りが抑えられめまいも治り、諦めていた頭痛も良くなってきたとおっしゃっていたとき。
なかなか相談する人がいなくてわからなかったけれど、話せて聞いてもらってよかったなどと言われたとき。
入院中に、薬と食事の相互作用や女性特有の悩みを相談された際に細かく毎度説明をしていたことで安心して退院され、退院後も外来で会った時に自分のことを覚えていてくれて退院後の患者さんの生活に役に立てたこと。
服薬指導と同じく、健康相談は薬剤師の大事な仕事の1つ。幅広く相談に乗り、患者さんの健康や不安解消に貢献できたとき、やりがいを感じているようでした。
3位 在宅医療 20%
コンプライアンスの悪い在宅患者の服薬支援を、ケアマネージャーや訪問看護師と相談し合い、その結果、劇的にコンプライアンスが改善されたこと。
在宅医療で医師と往診する際に、薬剤はどれが良いと思うか意見を求められること。
診療ガイドラインを参考にどういう薬がどのように使われているかを、医師に伝えて処方に反映されることもある。
在宅で患者さん、家族の方の感謝が、普通の業務よりすごかった。子供さんから、感謝の手紙もらった。
高齢化社会が続く中、薬剤師の活躍の場はさらに薬局の外へと広がり、在宅医療にやりがいを見出す薬剤師は今後さらに増えていくと予想されます。
4位 チーム医療への参加(医師・看護師からの相談対応含む) 16%
実際の患者に触れ、患者の状態を見て医師や看護師と協議し自分の治療方針が採用された時にやっててよかったと思う。
担当病棟の患者さんが感染症に罹患した際に、培養結果や抗菌薬の感受性結果、臨床症状などを踏まえて医師と抗菌薬の協議をし、その治療により患者さんが回復したこと。
自分の意見が反映され、それがわかりやすく目に見える結果として出ると嬉しくなりました。
5位 処方監査や疑義紹介 4%
持病について確認したところ処方薬が禁忌だという事がお話の中で発覚。Dr.へ伝え忘れていたとのことで疑義照会。
安全な薬への変更をし服薬指導。薬剤師だからこそ、もう一度患者さまについて確認でき、最悪の事態を防げたことだと思っています。
患者さま、Dr.からも感謝のお言葉もいただき当たり前のことをしてるだけですが嬉しかったです。
薬剤師しての視点を活かし、治療に貢献できることは大きなやりがいに。薬剤師の職能がさらに認められるよう、スキルや知識を高めたいですね。
6位 特になし 2%
薬剤師として既に20年経過したが、やりがいを感じる職業だとは思わなくなった。
その他 8%
薬剤師業務マネジメント。現場で起こる様々な問題を解決していくこと。
コロナウイルスのワクチン接種の手伝い。自分たちの地域の薬剤師が空いている時間にコロナウイルスの予防接種の注射や問診の手伝いをすることで、地域の人々に薬剤師として貢献できてると感じられる。
OTCを扱う企業において製品監査を実施しました。ニッチ過ぎて購入者等期待できないと高をくくっていた製品が売れたりすると個人の価値観の狭さを感じ、他者への理解が進んだように思いました。
お客様にあなたに憧れて薬剤師になりましたと言われた。
薬剤師ならではの立ち位置、薬剤師だからこその視点が活かせる仕事に、やりがいを見出している薬剤師が多くおられました。今後薬剤師の活躍の場が広がる中でも、職能を活かすことでやりがいを見つけられそうです。
2.どのような職場が薬剤師としてのやりがいを感じられますか?理由も教えてください。
薬剤師の仕事内容は、職場によって大きく異なります。
薬剤師の職能を発揮し、やりがいを感じられる職場はどこと考えるか伺いました。
結果は、以下です。
職場ごとに、主なご意見を紹介します。
1位 調剤薬局 42%
急性期の病院では短期間しか患者さんをフォローできないが、調剤薬局では定期的に来局されるため長期的なフォローが出来るため。
長く患者さんと接することで信頼関係が芽生え、治療だけでなく生活全般含めた指導を行うことができる。
多科受診、多種類の薬を服用をする高齢者が多い時代。相互作用や重複服用をチェックできるのは、1人の患者の多数の処方箋を確認することができる調剤薬局だと思う。
医師にも看護師にもできない、薬の相互作用のチェックができるという部分にやりがいを感じる。
調剤薬局は病院やドラッグストアと違い、薬剤師が業務の中心にあると実感できるためです。
処方箋調剤は薬剤師の独占業務であり、自分の意見を反映させやすい点にやりがいを感じます。
患者様の身近で長く健康をサポートでき、なんでも相談に乗れる存在になれるところにやりがいを感じます。
多くの方の健康にコミュニケーションを通して関わることができ、患者様のありがとうで毎日頑張れます。
病院の勤務経験がありますが、病棟業務が少なかったため患者さんと一対一で仕事をすることが少なかったです。
薬局は小さい規模の薬局の方が患者様の顔が覚えられるのでやりがいを感じます。
大人数の薬局のときは作業をしているだけな気持ちがありました。
薬剤師が中心となる調剤薬局で、1番やりがいを感じやすいと回答した方が多い結果となりました。かかりつけ薬局の浸透で、さらにやりがいは増すと予想されます。
2位 病院・クリニック 37%
調剤薬局やドラッグストアでは、処方箋に対しての調剤や服薬指導しか行うことが出来ず、処方提案や各種介入が出来ない。
医師と薬剤師を同列にするには知識が必要不可欠だが、同じ目線で治療に携わることが唯一可能なのが病院である。
保険薬局での服薬指導は待っている患者さんもいるので長くはお話しできませんが、病棟では一人の患者さんと時間に余裕をもって服薬指導ができるため、患者さんとの信頼関係が築きやすいからです。
病院薬剤師は時には患者さんのカウンセラー的な存在になることもあります。
様々な職種が存在するため、患者だけでなく他職種への情報提供が質の高い、安全な医療になると考えられるから。
また各職種によって問題点が異なるため、それをチームとして解決することができるから。
近年盛んに行なっている病棟業務では、医師、看護師、他コメディカルから必要とされる場面も多く、非常に大変かつ責任感を感じます。また、急性症状の患者さんの良くなる姿(悪くなる姿もですが)を目の当たりにすることができます。そのような時は薬剤師として、薬のプロとして薬の重要性を再確認し、やりがいを感じておりました。
薬剤師が最も深く治療にかかわれるのが、病院での仕事。主にチーム医療の一員として医療に携わることにやりがいを感じる方が、病院を挙げています。
3位 ドラッグストア 14%
ドラッグストアであれば調剤業務に限らず、OTC医薬品やサプリメントなどの選択・アドバイスもできるから。
他の業種より、患者さんからの距離が近く相談を受けやすい。また、相談内容が多岐に渡るため。
患者様との距離が近く、健康相談の相手として認識してくださるから。
様々な選択肢から、薬剤師自身が薬を選択するドラッグストア薬剤師。密に健康相談を受ける機会も多く、やりがいの大きい仕事です。ドラッグストア業界は好調が続いており、需要が増すでしょう。
4位 企業 3%
市場には、自分の病気や症状、ヘルスクレームに満足していない患者が多く存在します。
中には自分の症状(ニーズ)と、改善できる方法(リソース)がマッチングしていないこともよくあります。
そのような対象者に、適切な薬を届けることも大切な仕事だと感じました。
その他 4%
行政は大変幅が広く、転勤もあり、権限を持った仕事であるために使命感と責任感でストレスは膨大です。
しかし、それだけに非常にやりがいがあります。
同じ調剤薬局でも忙しすぎて服薬指導の時間が取りにくい薬局や、チーム医療に貢献しにくい病院では、薬剤師のやりがいも減ります。環境によっても、薬剤師のやりがいは大きく異なるでしょう。
3.どのような職場環境が薬剤師としてやりがいを感じられますか? その理由も教えてください。
薬剤師の仕事のやりがいは、職場の環境によっても大きく変わります。
最後に以下の中から、薬剤師がやりがいを感じやすい職場を選んでもらいました。
- 薬剤師としての職能を発揮させてくれる職場
- 人間関係に気を配ってくれる職場
- 自分の意見が反映されやすい職場
- キャリアアップしやすい職場
結果は、以下です。
選んだ理由を、ランキング順にいくつかご紹介します。
1位 薬剤師としての職能を発揮させてくれる職場 46%
調剤・薬歴記載など対人でない業務は、機械やシステムを導入するなどできるだけ効率化・簡素化して時間を削減し、服薬指導などの対人業務に時間を割けるような職場だと、やりがいを感じることができそうです。
在宅医療における介護は医療と違って、人と人との結びつき、介護報酬というインセンティブ以上にケアスタッフ間での信頼関係が基盤となると感じています。
だからこそ、在宅業務への理解を示してくれる職場、そしてスタッフたちの研鑽を惜しまない職場が最もやりがいを感じられる職場だと考えます。
多くの薬剤師が多かれ少なかれプライドを持っていると思う。また、常にスキルアップをし、知識を深めたいと思っている薬剤師が多いと思う。
そんな自分の知識や得意なことを披露できる時こそ、やりがいを感じるのではないか。
そういう場を設けてくれる職場であれば、気持ちよく仕事ができるのではないか。
薬剤師としていろいろな経験をさせてもらえることで、自分の職能も成長できるから。
煩雑な業務や環境に左右されず、薬剤師としての職能を大いに発揮することが理想です。薬剤師の職能を発揮することは、最終的に患者さんの利益に繋がりますね。
2位 人間関係に気を配ってくれる職場 29%
ある程度人間関係がよくないと、正しく教えてもらえなかったり、指導が適当になりがちだと思います。
新人がほったらかしになっている現場を見てきたのでそう思いました。
人間関係がギスギスしていると過誤やヒヤリハットが増えてしまい、本末転倒になってしまいます。
女性が多い職場なので、揉め事も多いのは事実ですし、子供の行事や体調などで休暇を必要とすることも多くあります。
その時の会社がフォローしてくださると、長く勤めやすく人間関係の悪化を防ぐことになるからです。
一緒に働くメンバーと信頼関係を築けるかどうかは重要なポイントです。仕事ができる人がキャリアアップに自己研鑽しているとお互い刺激に感じます。
服薬指導などで自分がチャレンジしようと思った内容があったときに、雰囲気や人間関係が悪いと批判が起きたりして伸び伸び指導できないから。
人間関係トラブルは、転職理由としても常に上位。人間関係が良好で、互いに協力して刺激し合える環境なら、仕事にやりがいを見出しやすいですね。
3位 自分の意見が反映されやすい職場 18%
意見が反映されるということは、信頼してくれているということ・話をきちんと聞いてくれるということ。なので、一緒に働いていて気持ちがいいし、自分も力を発揮できるので、やりがいを感じられると思います。
自分の意見が反映されやすい職場などで居心地がよくなければ、どれだけ他の点がよかったとしても長く続けることはできないと思う。
仕事をする上で業務改善を行っていくことが大切だと思うので、その中で自分の意見が反映されることでモチベーションを保って仕事を続けられると思うから。
薬剤師の職能を重視する職場は多いですが、自分の意見を反映しやすい環境というのはまだ少ないのではと思います。自分の責任も大きくなりますが、その分自分の意見に責任を持って伝える意識が出来て、より良い方向に進む事が出来ると思います。
薬剤師を取り巻く環境や法律がどんどん変わるように、薬剤師自身や職場も変わる必要があります。より良い環境のため、働く人の意見が反映されることは大切ですね。
4位 キャリアアップしやすい職場 7%
特に調剤薬局では給料も頭打ちになりやすく、キャリアアップを実感しづらいと思ったから。
現場では管理薬剤師以外の役職もないので、評価を受けづらい。
反対に、評価や給料がどんどん上がっていけば、やりがいを感じられると思う。
キャリアに応じて昇進や昇給の体系が整備されていることが、仕事にやりがいを感じるうえで大切だと思います。
給料も横並びではなくある程度職能を考慮してくれることが望ましいです。
当然、仕事をする意味は給与です。自分の頑張りやスキルがキャリアや年収アップに反映されると、やりがいを感じられますね。
まとめ
現役薬剤師のやりがいは?
- やりがいを感じる仕事内容は服薬指導や薬剤管理
- やりがいを感じやすい職場や調剤薬局、次に病院・クリニック
- 薬剤師としての職能を発揮させてくれる職場でやりがいを感じられる
薬剤師を取り巻く環境が日々変わる中、薬剤師の仕事は多様化を続けています。
在宅医療に薬剤師の活躍の場が広がり、さらに2020年9月1日には継続的服薬指導(フォローアップ)も義務付けられました。
活躍の場が広がり、薬剤師は様々な仕事にやりがいを見出すチャンスが増えたと言えます。
やりがいは長く仕事を続けるため、そして患者さんのためにも大切なことですね。
アンケートを見て「もっとやりがいのある職場で働きたい!」と感じたなら、職場を変えようとするより、転職する方が簡単にやりがいを感じられることも。
薬剤師が転職するなら、理想の希望を具体的に挙げるのが転職成功のコツですよ。
今回のアンケートでは、非常に多くの素晴らしい意見をいただけました。
記事内でご紹介しきれなかった回答を含め、回答全文を下記で記載しています。
薬剤師のやりがいをもっと知りたい方は、ぜひご覧になってくださいね!
参考 アンケート回答全文
三上小夜香
大手調剤薬局に勤務後、転勤族であるMRとの結婚により退職。結婚後はしばらくパートで働き、派遣薬剤師に転向。妊活に専念するため退職し、現在は子育てとライターの兼業中。趣味はゲームとネットサーフィン。