2022年4月1日より、リフィル処方箋の導入が始まりました。
アメリカでは70年以上前から導入されていた、リフィル処方箋。
待ち望んでいた患者さんも多いです。
しかし日本でのリフィル処方せん導入は、まだ手探り状態。
導入に踏み切れない病院も少なくありません。
そこで現役の薬局薬剤師にアンケートを行い、リフィル処方せんの導入状況を調査しました。
薬剤師目線でのリフィル処方せんの問題点や将来の展望も伺っています。
またリフィル処方箋応需の手順や確認事項について、厚生労働省の説明を元に図解資料を作成致しました!
記事の末尾からダウンロードできますので、ぜひ活用してください!
三上小夜香
大手調剤薬局に勤務後、転勤族であるMRとの結婚により退職。結婚後はしばらくパートで働き、派遣薬剤師に転向。妊活に専念するため退職し、現在は子育てとライターの兼業中。趣味はゲームとネットサーフィン。
対象者:薬剤師100人
調査方法:インターネット調査1,2
調査期間:2022年4月11日~4月21日
好きなところから読む(クリック可)
リフィル使用不可の場合。処方箋の記載を調査。
リフィル処方箋の様式は、備考欄の上下にリフィルについての記載が入るものです。
令和4年4月1日以後に受け取った、リフィル不可処方箋の記載について伺いました。
※複数回答可
半数を超えるリフィル不可処方せんに、印刷時点で訂正線が入っていました。
つまり内容に関わらず、現時点でリフィル可処方箋を出す予定はないということ。
一方、以前の処方箋のまま使用している病院は、レセコンを更新していないことも…
処方制限のアラートがかからないケースがあるので、要注意です。
リフィル不可処方箋でリフィル欄がそのままだと、患者さんが勝手に書き加えてしまう可能性があります。
現状でリフィル不可の処方箋を出す場合は、リフィル欄に訂正線などを入れるのが良いでしょう。
リフィル処方箋の浸透。患者さんのリフィル希望はあった?
慢性疾患の患者さんにとって、薬をもらうための受診はわずらわしいもの。
「リフィル処方箋を待ち望んでいた!」という声もありますが…
早く日本もリフィル処方せんになればいいのに〜
医療費削減になるでしょ
子供のニキビの薬なんてそんな診察必要ない— 🦍 (@sitekabe) November 17, 2017
実際に患者さんから、リフィル処方せんの希望はあったのでしょうか。
約2割の患者さんから、リフィル処方箋の希望があった結果です。
比較的多くの反応があることが伺えます。
メディア等でのアナウンスが増えれば、さらにリフィル希望の患者さんは増えるかもしれません。
3月にはYahoo!ニュースにも取り上げられていましたよ。
引用元:Yahoo!ニュース
リフィル処方箋を応需した薬剤師に調査。何科のどんな処方箋?
アンケートを行った100名のうち、すでにリフィル処方箋を応需した薬剤師は16名。
伺ったリフィル処方箋の内容は以下です。
カッコ内はリフィル回数。
リフィル処方箋の内容
- 内科の降圧剤・脂質代謝異常薬の90日処方(3回)
- 内科の28日処方(不明)
- 内科の降圧剤2種、糖尿病薬2種の60日処方(2回)
- 降圧薬1種類の90日処方(不明)
- 糖尿病でテネリアの90日処方(3回)
- 循環器90日処方(3回)
- 90日分以上の漢方(不明)
- 婦人科の低用量ピル(2or3回)
- 整形外科の痛み止めの30日処方(3回)
- 整形外科の90日処方(3回)
- 耳鼻咽喉科の小青竜湯30日処方(3回)
- 耳鼻科の内服薬や点眼剤など(不明)
- 泌尿器科の28日処方(2回)
- 泌尿器科の30日分処方(3回)
- 小児科のミティキュア・シダキュアの90日処方(3回)
- シダキュア30日処方(2回)
状態が安定しやすい慢性疾患や、漢方・減感作療法薬のリフィル処方箋が多い結果です。
慢性疾患においては、検査の頻度等を確認しておきたいですね。
今回、血液検査の頻度と安定状況を確認しているという声がありました。
内科の降圧剤2種、糖尿病薬2種の60日処方(2回)
1年で血液検査を2回行なっており、血糖値は安定していると確認。
慢性疾患患者さんの確認事項や伝達事項については、薬局で決めておくと良いでしょう。
リフィル処方箋の応需。困ったことは?
リフィル処方箋を応需した16名の薬剤師に、リフィル処方箋で困ったことがあったか伺いました。
結果は以下です。一部抜粋してご紹介します。
特に困ったことはないという方は、2名でした。
次回来客日に来なかった場合、電話連絡が必要との事だがその管理が困る。
まだ数人なので管理も楽だが、増えてきた時に大変になる事は明らか。
コピーをとったり、処方箋の裏に薬局印を押したり、次回はいつからいつまでに間に薬局に来るように教えたりしないといけないなど、やることが多くて面倒だと感じた。
次回調剤日の記載欄が小さく、またこの日から7日前後に来局してくださいというような文言の記載がなかった点。
次回調剤予定日について口頭でお伝えして、7日前に電話する約束になっているが、連絡がつかなかったり、2ヶ月後だといつからいつまでなら応需可能なのかについえ忘れてしまわれている可能性があるため、フォローが難しい。
次回来局予定日を管理するツールの準備が整っていない。
来局予定期間を過ぎた場合の対応も何が正しいのか分からない。患者に対してリフィル処方箋の取り扱いを説明するツールが準備できていなかった。
患者希望でリフィルになるのは良いが、医師の判断で高齢者にリフィルが出た時が困った。
普段の長期処方とリフィルの違いを説明するのが、難しかった。
リフィルの欄が小さく、気付きにくい。
花粉症の患者さんに、「もう花粉の時期が終わるから、2回目以降は不要」と言われた。
病院側でリフィルの説明をきちんとしてほしい。
勘違いしてやってくる患者さんがたまにいて対応に困っています。
制限のある薬にはリフィル処方箋が適応されないことが周知されていない。
処方箋ごとというのはレシピと紙を分ければいいのか曖昧。受付時においてすべてリフィル処方箋にチェックが入っていなければ疑義対象なのかなどがわからない。
困ることとしては、次回来局日に対するフォローが大変という声が多く挙がりました。
数か月単位の来局を、薬局で管理するのは正直大変です。
制度としてハッキリしない部分も多く、リフィル処方箋に対し病院・薬局共に手探り状態です。
薬剤師会等で対応をまとめ、勉強会を開催して欲しいという意見も出ています。
リフィル処方箋のこれから。将来の展望や改善して欲しい点は?
まだまだ始まったばかりのリフィル処方箋。
将来の展望や改善して欲しい点を、現場の薬剤師に伺いました。
※複数回答可
実際の回答は以下です。
※回答は読みやすいように一部改変しています。
1位 患者さんにリフィル処方箋について周知して欲しい 16%
患者さんがそもそもリフィル制度ができたことを知らなすぎる。
処方元での十分な説明が必要である。テレビでも取り上げてほしい。
リフィル処方箋について患者さんの知識がないため、毎回の説明が大変。
期限無くいつでも何回でもいいと思っているかたが多い。
患者さんにまだ認知されていないので、マイナンバーのように国のCMなどで広く認知されるようにしてほしい。
2位 記載をわかりやすくして欲しい 15%
リフィル可の欄が空欄だと、リフィル不可なのか、書き忘れなのかわからない。
リフィル可だけでなく不可の欄も作って必ず記入するようにしてほしい。
調剤日と次回調剤予定日を書く欄はあるが、それだけでは説明不足のため、受け取り可能期間を記入する欄を追加してほしい。
申し訳程度のリフィル欄が多く、非常に小さいため見過ごす事がある。
重要な情報なので受付時に判別できるようにハッキリとした欄を設けてほしい。
3位 偽造対策をして欲しい 13%
回数を記入する欄に医師の署名や押印の欄があった方がいいと思う。
今のままだと、患者が勝手に記入しても分からない。また、記入すれば繰り返し使えると誤解を与えてしまう可能性がある。
リフィル欄が手書きの場合、医師が記載したか、患者が記載したかの判別をする方法がなく、通常の処方箋をリフィル処方箋として偽装することが容易ではないかと思う。
4位 病院・医師に対してリフィルを推進して欲しい 9%
リフィル処方箋は個人クリニックでの金銭的メリットが少ないためかほとんど出ない印象。
普及を拡大するためにリフィルで得られる点数を病院側にもつけれるようにするべきかと思います。
薬剤師だけでなく、医師へリフィルに対しての理解を深めるような取り組みを国がやってほしい。
4位 患者さんの利益・薬剤師の立場や知識の向上に期待 9%
病院の混雑緩和や医療費抑制、受診忘れによる服薬漏れの減少に期待したい。
リフィル調剤では、患者へのヒアリングから本当に調剤投薬していいか薬剤師の判断が肝となります。
よってより高度な知識を持つ薬剤師が増えます。世間からの薬剤師に対するイメージも良い方向で変わると思います。
6位 処方箋の紛失対策をして欲しい 8%
リフィル処方だけでもいいので電子化してほしい。紙の処方箋だと必ず無くしてしまう患者が出てしまうため。
7位 患者さんの情報を共有したい 6%
リフィル処方箋を必ず同じ薬局に持ってくるとは限らないので、次回への引き継ぎコメントを共有できるシステムが欲しいです。
8位 リフィル処方箋の浸透は難しい 5%
リフィル処方箋の導入により、医業収入が減少するので普及は厳しいのでは?と考えます。
また門前薬局でないと副作用や飲み残しの判断も厳しいと感じます。
その他 17%
優秀な薬剤師、医者と対等に話ができるような技量の薬剤師を育成しないと、医療事故などが起こり患者さんに不利益を与えてしまうと思います。
リフィル専門の薬剤師など一定の線引きがあれば、患者さんにも国にも有用な事だと感じます。
リフィル3回にとどまらず、回数を増やして欲しい。
回数の上限なく薬剤師の判断で、受診のタイミングを促す。
遠方で通院が難しい患者さんに対しては需要があると思う。
ただ、結局薬局に出向かないといけないため、リフィル可であれば定期的に薬が自宅に送られてくる仕組みがあった方が患者さんの負担が少ないのではないかと思う。
リフィル処方せんの運用が広がると、薬剤師側で患者さまの状態を把握したうえで、2回目以降の調剤をせず医療機関に紹介する方が望ましいケースも出てくるのではないかと思われます。
そういった場合の判断基準を、オンライン含む研修等で学べる機会があるとありがたいと思います。
患者さんからのリフィル希望が2割に留まったことからも、まだまだリフィル処方箋が周知されていないことが伺えます。
医療費削減や待ち時間の軽減に向け、リフィル処方せんの周知が望まれますね。
リフィル欄の字が細かく、読みにくいのが気になる薬剤師も多いです。
現状は偽造可能なことも含め、リフィル記載方法の変更が求められます。
病院側にメリットを与え、リフィル処方せんが推進されて欲しいと願う薬剤師は多い結果。
リフィル処方箋の応需には、薬剤師の知識や経験が欠かせません。
必要に応じて受診を促す必要もあり、AIには奪われない対人業務の1つに。
薬剤師の地位向上に繋がるリフィル処方箋が、使いやすく変わり浸透することが望まれます。
まとめ
処方箋のリフィル可により、医療費の削減や待ち時間軽減・薬剤師の地位向上が期待できます。
しかし現状ではリフィル処方箋の発行数はそれほど多くなく、否定的な医療機関も多いです。
リフィル処方箋発行による医療機関側のメリット発生や、わかりやすく偽造不可能なリフィル処方箋の仕組み作りが求められますね。
薬剤師側もリフィル処方箋の増加に向け、スキルアップしておきましょう。
リフィル処方箋の仕組みは、令和4年度調剤報酬改定の概要に掲載されています。
こちらをわかりやすく図式・一覧化し、ファイルにまとめました。
ダウンロードして活用してください!