調査データ

看護師業務のタスクシェアに賛成の薬剤師は76%!薬剤師が最も不安に感じる業務とは?

看護師業務のタスクシェアに賛成の薬剤師は76%!薬剤師が最も不安に感じる業務とは?

  • 2022.06.22

薬剤師の業務が対物業務から対人業務へシフトしつつあり、在宅医療における薬剤師の役割が見直されています。

その中で在宅医療に関わる看護師の人手不足を、薬剤師が補うことが政府の規制改革推進会議の医療・介護分野の答申案にて検討されました。

職種の異なる医療従事者が仕事を分担する「タスクシェア」や一部を移管する「タスクシフト」は海外の医療現場で進んでいます。
例えば在宅医療では、患者宅で看護師が点滴の薬剤を充填・交換したり、床ずれに薬を塗ったりすることが多くあります。
こうした仕事を薬剤師が代わりにできないか、厚生労働省などと検討していきます。
引用元:日本経済新聞

ここでは薬剤師が看護師の業務をシェアすることについて、現役の薬剤師100名に意見をうかがいました。

今後の薬剤師のあり方や、在宅への関わり方を考えるキッカケとなる内容ですよ。

 

この記事を書いた人

三上小夜香 三上小夜香
大手調剤薬局に勤務後、転勤族であるMRとの結婚により退職。結婚後はしばらくパートで働き、派遣薬剤師に転向。妊活に専念するため退職し、現在は子育てとライターの兼業中。趣味はゲームとネットサーフィン。

対象者:薬剤師100人
調査方法クラウドワークスによるインターネット調査
調査期間:2022年6月12日~6月16日

薬剤師が看護師の仕事を分担する在宅のタスクシェア。賛成?反対?

今回検討されたのは、在宅医療における看護師業務のタスクシェアです。

率直に賛成か反対か、その理由を調査しました。
薬剤師が看護師の仕事を分担する在宅のタスクシェア。賛成?反対?

4人に3人の薬剤師が、在宅における看護師業務のタスクシェアに賛成しました。
それぞれの回答理由は以下です。
※いただいたご意見は読みやすいように一部改変しています。

看護師業務のタスクシェアに賛成の理由

看護師業務のタスクシェアに賛成の理由※複数回答可

1位 薬剤師の職能・職域が広がるから 36%

在宅医療の必要性が高まっている中で、少しでも多く患者さんに関わりたいと感じるためです。
また看護師の仕事を実際に経験できることにより、今よりも深いレベルでチーム医療に貢献できると思ったためです。

タスクシェアにより、在宅医療における薬剤師の在り方が変わる為、今後の薬剤師の地位向上に寄与してくると考える。

今までは行ってこなかったバイタルチェックや注射の混注などの業務を行うことで、より医療人としての知識の底上げ、レベル向上につながると思うから。

2位 看護師の負担が減るから 27%

看護師は看護師にしかできない仕事で忙しいので、薬に関することはタスクシフトして看護に専念してもらえると良いと思う。

看護師は今、薬剤師の仕事もしています。なので薬剤師が看護師の仕事をしても良いと思います。
医師の指示のもと医療行為、患者さんの体に触る事はきちんとどこまで可能かを決めて解禁しても良いのではと思います。

薬剤師業務における対物業務は、今後さらにAIによる自動化が進んでいき、負担が軽減されることが予想されます。
対して看護師の対人業務はAI化が難しいとされています。
在宅現場においてスムーズな医療を行うために自動化できるものは自動化し、できないものに関しては薬剤師もある程度負担してもいいのではないかと考えます。

3位 患者さんの状態が把握しやすくなるから 12%

薬を単に渡すだけでなく、薬を実際に飲んでいるところや、投与するところ・効果・副作用が出ているところを見る事・扱う事で、どのような点に実際患者さんが困っているかなど新しい視点が手に入るように思うため。

薬剤師は主に処方から患者のことを考えるが、看護師とタスクシェアをすることで看護側の視点から患者のことを考えることができるため。

その他 7%

軟膏の塗り方やくすりの飲み方、パッチのはり方など、看護師さんに伝えるのがなかなか難しい場合があるので、直接患者さんに指導出来たらより良いというケースが今までもあったため。

よく患者さんから湿布を貼ってほしい、塗り方を教えてほしいなど法律に触れることを頼まれるからです。

看護師業務のタスクシェアに反対の理由

看護師業務のタスクシェアに反対の理由※複数回答可

1位 薬剤師が業務過多になるため 14%

対物から対人業務にシフトしていってる中で、現状業務量がかなり多く、新たに仕事量が増えてしまうと本来の業務にかなり支障がでそうだから。

今までの在宅医療での仕事、24時間受付体制、通常の業務など、薬剤師としての仕事や求められる事も増えている中、職種が異なる看護師の仕事まで手が回らない。給与も見合わないと思う為。

在宅医療現場における薬剤師の役割は現在の状態でもカツカツなのに、それに加えて看護師の仕事が追加で行うことは不可能に近いように感じるため。

2位 専門性が活かされなくなる 8%

薬剤師には薬剤師の看護師には看護師の専門性があって行っている仕事だから、タスクシェアをしたらその専門性が失われると思います。

薬剤師は医薬品の専門家として、在宅医療に対して貢献できる業務が既に多々あるため、あえて看護師の仕事を分担する必要がないと考える。

3位 技術・知識が不足しているから 4%

軟膏や湿布を貼るくらいであればいいとは思うが、褥瘡などへの対応だとやれる自信が無いと言うのが率直な意見。

注射やフットケアなど看護師が行う専門的な内容は薬剤師にとって専門外すぎる。
一から研修して習得する場合、出来る薬剤師と出来ない薬剤師が存在するようになり、訪問看護師側も対応に混乱してしまう可能性がある。

その他 1%

薬剤師の教育は6年制であり、看護師よりも時間がかかっている。
今の点数のまま薬剤師が看護師の業務を行うことは、薬剤師にとって効率が悪く担い手がいない。
薬剤師が行う場合に点数を上げるというのであれば、それは医療費が上がる事になる。

薬局の生き残りが注目され、薬局薬剤師の過多も囁かれている今、看護師業務のタスクシェアは薬剤師の地位向上に繋がると考えられます。

在宅現場における、看護師不足は深刻です。

訪問看護ステーションは2016年度以降、「求人倍率の高い、つまり看護師不足のトップ」となっています。1事業所当たりの平均スタッフ数が6.7人のところ、「4.5人」もの求人があり、看護師不足感が高いことを再認識できます。
引用元:訪問看護ステーションが看護師不足トップを独走、看護師の働き方改革が重要―日看協

看護師不足は簡単には解消しません。薬剤師が手助けし、地域医療を支えることも必要となるでしょう。

在宅の患者さんに直接触れることで、服薬の状況や副作用の発現状態も確認しやすくなりますね。

ただ薬剤師の対物業務が減っても、全体の業務量が減るわけではありません。むしろ対人業務の増加により、仕事が忙しくなったと感じる薬剤師は多いです。

看護師業務のタスクシェアにより、薬剤師本来の業務が圧迫されるのは本末転倒です。
職域が曖昧になることで、情報伝達が上手く行かない可能性も否定できません。

在宅における看護師業務のタスクシェアには、多方面におけるメリットと共に大きな問題点があるでしょう。

在宅での看護師とのタスクシェア。薬剤師ができる業務とできないと感じる業務

在宅医療において、現在看護師は様々な業務を担っています。

その中から代表的な業務について、薬剤師としてできると感じるか、できないと感じるかうかがいました。

結果はこちら。
看護師とのタスクシェア。薬剤師はどんな業務ができる?※複数回答可

多くの薬剤師が、内服薬の与薬や軟膏の塗布、バイタルサインの測定は問題なく行えると回答しました。

薬剤師がバイタルサインを採る必要性は、10年ほど前から論じられていますね。
全国で薬剤師向けのバイタルサイン講習会も行われています。

一方、患者さんに自己注射を打つことに対しては、半数の薬剤師が抵抗を感じていました。
インスリンは単位の間違いが生死に関わるため、荷が重いと感じる薬剤師は少なくないようです。

次に薬剤師が「これだけは難しい」と感じる、在宅でのタスクシェア業務はこちら。

薬剤師ができないと感じる在宅でのタスクシェア業務※複数回答可

1位 口腔ケアや排泄ケアなど介護業務 54%

介護業務はきちんと研修や実習を受けていないことが多いと思うので、どの程度請け負えるかというのは疑問ですし自信がありません。

口腔ケアや排泄ケアはハードルが高い。ただ、一番介入しやすい部分だとは思う。

排泄や口腔ケアなどの介護業務に関して、薬剤を触る業務と並行は避けたいと思う。

2位 注射・採血 24%

注射や採血など、患者さんに直接侵襲する行為。基本がわかっていないので、責任を取れる自信がない。看護師は看護学校時代に実際に針を指す訓練をしている。

インスリンの自己注射は単位間違いが怖い。混注はクリーンベンチで行わなかったことで感染が起きるのが怖い。

3位 特になし 13%

やりたくないことはありません。強いてあげるなら、しっかりと学ばずに他の専門職の業務を行うこと。

4位 薬剤師の知識を活かせない仕事 9%

薬剤師は薬のエキスパートであり、患者様への今後の治療により効果的になるものはシェアすべきですが、それ以外はシェアする必要があるのかと疑問です。

その他 5%

毎日のケアが必要な項目については現実的ではない。

半数以上の薬剤師が、介護業務を行うのは難しいと回答しました。

シンプルに抵抗があると感じる方も多いですが、薬を扱うため感染が気になるという意見も。体力的にも負担が大きい業務ですね。

注射や採血は、技術的なハードルが高い業務です。十分な研修を行うことも現実的ではありません。

薬剤師は薬剤師のすべきことをやるべきとの声が挙がる一方で、できることは何でもやるべきと考える方もいる結果となりました。

看護師業務のタスクシェアに新たな専門資格は必要?薬剤師が受けたい研修とは

薬剤師にとって、多くの看護師業務は知識や経験の範囲外です。

実際にタスクシェアを行うなら、研修は必須ですよね。
専門性を高めるため、新たな専門資格が必要と考えるか調査しました。

看護師とのタスクシェアに新しい専門資格は必要?

約4割の薬剤師が、専門資格は必須ではないと考える結果です。

十分に研修を受ければ、専門資格がなくても問題ない業務に限定したシェアが理想ですね。

次に、薬剤師が看護師とタスクシェアするなら受けたいと考える研修はこちら。

看護師とのタスクシェアに向けて受けたい研修※複数回答可

薬剤師が介入しやすい、バイタルサインの測定や混注等の研修を受けたいと考える方が多い結果となりました。

内服薬の与薬や軟膏の塗布もタスクシェアしやすいですが、研修までは不要と考えられます。

一方、注射や介護業務はタスクシェアできないと感じる薬剤師が多いため、研修を希望する薬剤師も少なくなっています。

薬剤師も忙しい。タスクシェアで外に出したい業務は?

在宅業務を担う看護師が不足しているとは言え、現在のところ薬剤師も余っているわけではありません。

むしろ対人業務が増えて、忙しいと感じる薬剤師も多いですね。

忙しい薬局において、もしタスクシェアで外に出せるなら、どんな業務をタスクシェアしたいか伺いました。
看護師とのタスクシェアに向けて受けたい研修※複数回答可

1位 調剤(ピッキング) 28%

調剤業務。専門的な知識をあまり必要としない作業が多いため。

一包化やピッキングなどの調剤業務全般をお任せできれば、対人業務により時間を裂けるようになり、処方提案や服薬指導、また服薬後のフォローもより行えると思います。

2位 一包化監査 24%

一包化監査は、薬剤師ではなくても問題ないと考えます。ただ、タスクシェアというより機械化が進むのが1番だと思います。人が行うのはミスが伴うので。私の薬局でも一包化監査の機械を入れました、エラーが多くてまだ信頼できるものではありませんが。

一包化や薬剤の監査などは薬剤師以外でもいいと思います。調剤技師などの資格を日本でも取り入れて良いのではないかと考えます。

3位 一包化調剤 21%

一包化の作成。監査は薬剤師業務として責任を持って行いたい。

医療事務による一包化調剤が可能となり、患者様に関わる時間が増えてきました。シェアできるものはしたいですが、シェア先の医療従事者の研修や資格の制度の導入が必要だと思います。

4位 薬歴入力 20%

薬歴入力は現在の業務の6割以上を占めているので、薬歴記入はタスクシェアしたい。

薬歴の入力だけなど、知識不要の事務作業。

5位 疑義照会 16%

疑義照会の形式的なものは薬剤師でなくてもいと思う。

6位 特になし 8%

薬剤師の職能はシェアできるものではないと思います。看護師も同じでしょう。教育訓練や研修や法令根拠があっての検討課題です。

7位 軟膏・水剤・散薬の混合 6%

ピッキングや一包化、軟膏、水剤などの調剤業務を外に出すまたは完全自動化したいです。

7位 在庫管理 6%

発注業務、在庫管理といった物流関係の業務。

9位 残薬調整 5%

残薬調整は、薬剤師でなくてもいいと思います。

その他 20%

一包化調剤、お薬カレンダーのセットや分包と漢方を1日分ずつホチキスでとめる

算定要件に係わる書面・書類の作成業務。

在宅の配薬。夜間の電話対応。坐薬など時間がかかる、特殊な薬局製剤の作成。

薬剤師がタスクシェアで外に出したいと考える業務は、疑義照会以外全て対物業務でした。
疑義照会においても、剤形変更など形式的な確認のみタスクシェアしたいという意見です。

薬剤師が考えるAIの活用方法でも、対物業務を全面的にAIに任せたいという声が多く聞かれました。

対人業務が重視されて業務量が増えていますが、対物業務が減っているわけではありません。

薬剤師の負担が増えることなく、より良い医療の形が出来上がるのが理想ですね。

まとめ

対人業務が重視される中で、薬剤師の活躍の場は薬局の外へと広がることが予想されます。

看護師とのタスクシェアが実現しなくても、これまでとは違う業務内容が求められる可能性が高いでしょう。

まずはバイタルサインなど、取り組みやすい知識から増やすと、これからの変化に対応する力が伸びて行きますね。

スキルアップの一貫として、今までとは違う知識や技術の会得も検討してみましょう。

※1
訪問看護ステーションが看護師不足トップを独走、看護師の働き方改革が重要―日看協

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